2011年8月31日

『これからのリーダーに知っておいてほしいこと』 中村邦夫・著 Vol.2597

【中村邦夫が実践した幸之助の教え】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569799000

本日の一冊は、松下電器の「破壊と創造」に挑み、奇跡のV字回復を実現した、現パナソニックの代表取締役会長、中村邦夫氏による一冊。

すでに形骸化していた幸之助の思想を、中村氏がどう解釈し、現場で実践していったか、そのプロセスがわかる、じつに興味深い一冊です。

氏が薫陶を受けた山下俊彦元社長の座右の銘、影響を受けたという豊田佐吉翁の生家の床の間の掛け軸の言葉、松下幸之助に学んだ人心掌握術、さらにはリーダーとしての心構えまで。

いずれも基本的な事柄ながら、いざ人の上に立つと忘れてしまいがちなことばかりが書かれています。

実務のヒントとしても、仕事における忍耐、公平な人事、スピードとアジリティを考えた経営、自らを戒める態度、さらには困難な仕事こそリーダーが出ていく原則など、いちいち参考になります。

たるんでいる時に読むと、思わずドキッとしてしまう内容ではないでしょうか。

あとがきによると、著者の中村氏は、「最初で最後」とのことで、本書を書かれたそうです。

とかく松下を破壊した的なことを言われがちな方ではありますが、本書を読むと、幸之助に私淑していたことがよくわかります。

最後の一文、<僕の心の中では、いまなお「松下幸之助創業者と同行二人」です>には、思わず胸が一杯になってしまいました。

貴重な一冊ですので、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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(豊田佐吉の生家にあった)母屋の床の間の掛け軸の言葉「百忍千鍛事遂全」(忍びに忍び鍛錬に鍛錬を重ねれば、できないことはない)を見て、“ああ”と思ったのです(中略)僕はこの言葉を、それ以来ずっと座右の銘として大切にしているのです

得意のときにおごらず、淡々として、失意のときにもあせらず、うろたえず(山下俊彦元社長)

私情を絶対にはさまないということが、やはりリーダーには必要です

社員というのはだいたい、トップの発言など残念ながらほとんど聞いていないものと思っていたほうがいいでしょう。ではなにで会社や経営者の姿勢を判断しているかというと、人事なのです。人事がほんとうに公平か、それに尽きるわけです

やりたいものがたくさんあっても、みずからの力なり、自分の立場、会社の立場というものを考えて、やってはならないものはやらないし、やめるものは断固としてやめる。そういうことが適時適切にできてはじめて、一人前の経営者といえるのではなかろうか(『松下幸之助 経営語録』)

経営のスピードには、大きく二種類があると僕は認識しています。一つは、ある目的を達成するための時間的な速度です。それがスピードです。それからもう一つ、アジリティというものがある。変化対応の速さ、俊敏性とでもいえるものです

謙虚な心持ちでいれば、他人の偉さが分かります。そうすると、自分の部下はたいてい自分より偉いなという気持ちになります(『経営心得帖』より)

結局、人間には“欲と二人連れ”で、利によって働くという面と、使命に殉ずるというといささか語弊があるが、世のため人のために尽くすところに喜びを感ずるといった面とがあるわけである。だから人を使うにしても、給料だけを高くすればいいというのでなく、やはり使命感というものも持たせるようにしなくてはほんとうに人は動かない(『人事万華鏡』より)

松下幸之助創業者も「こわさ」を大切にしないといけないと言われていますね。経営者やリーダーは、こわい人を必ず何人かは持っていないと、道を間違えてしまう

若いときによく言われたことで、「酒も公事なり」というのがあります。酒のうえの席で、暴言、失言がありますが、それを「酒のうえのことだから、お許しください」というのも、ありえない話だと思います

(松下幸之助は)一番困難な仕事は、自分がやらないといけないと考えられた

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『これからのリーダーに知っておいてほしいこと』中村邦夫・著 PHP研究所
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◆目次◆

第一部 より楽しく仕事をするために
第二部 よく学び、よく考え、よく伝えるために
第三部 “日に新た”であり続けるために
おわりに 国難と対峙するこれからのリーダーたちへ

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