2011年3月14日

『人間の覚悟』五木寛之・著 vol.2427

【非常事態における商人の務め】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4106102870

今日は、朝早くに家を出て、壊滅状態だったオフィスをスタッフみんなで片づけました。

倒れた本棚の影響で壁が削れ、書類が散乱しているひどい有様でしたが、片付けているうちに、一枚の紙が目に留まりました。

それは、「繁昌や金儲けは商売の目的ではない」と喝破した、かつての商業界主幹、故・倉本長治氏の言葉でした。

「商人のエゴ」と書かれた短い文章ですが、現在、国家の危機に直面しているわれわれビジネスマンが為すべきことを、見事に表現している素晴らしい文章でした。

「商業界 同友会ニュース2009.10.1 No.57」より引用してご紹介しようと思います。

<アッと驚くような利巧な商人が多い。無知ではないが、考えない商人は、その時だけの客を惹きつけるために、自分自身を傷つけていることを軽く見すぎるばかりか、そのことによって、他の善良な多くの同業の商人をも大きく傷つけていることに気がつかぬのである。それは一人の商人が人なかで大きな音を立てて屁を放っても、別に他人に害はないと思い込んでいるようなものであって、世間の人びとから「商人というやつは、恥も外聞もない連中だ」と、世の中が思うのも、商人がそんな風に思われるのも、何も自分のせいではないと思い込んでいるようなものである。事実、その通りだろうが、それはやはり一種の不道徳なのであり、他人迷惑もはなはだしい事柄である>

今日、帰り際に、妻に「ラーメン食べようよ」と言われ、オフィス近くのラーメン屋に行ったら、節電中だというのに、看板の明かりが煌々と輝いていました。

とても食べる気にならず、周りを見渡すと、吉野家さんと、てんやさんが看板の電気を落として、真っ暗ななか、細々と営業している。

結局、てんやさんで、天丼を食べて帰ってきました。

土井は、商人として生まれ育った以上、日々頑張っている商人が悪く言われることには耐えられません。

ですから、商人のみなさんには、今こそ節度ある商売を、そしてたとえ儲からなくても、社会のために行動して欲しい。

また、被災者のみなさまの力になるべく、できる限りの寄付や人的支援をしていただければと思います。

土井も及ばずながら、チャリティーセミナーや、義援金の寄付を行いたいと思っています。

宣伝っぽくなると嫌なので、金額は公開しませんが、誠意ある金額を寄付させていただく予定です。

かつて青春時代の一部を過ごした宮城県、そして新卒で初めて働いた福島県に、少しでも力になれればと思っています。

そして本日も、闘い続ける日本人を励ます本ということで、五木寛之さんの『人間の覚悟』を紹介させていただこうと思います。

2年ほど前に出された本のため、地震を前提にはしていませんが、詳しくは、赤ペンチェックをご覧ください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「諦める」というのは、投げ出すことではないと私は考える「諦める」は、「明らかに究める」ことだ。はっきりと現実を見すえる。期待感や不安などに目をくもらせることなく、事実を真正面から受けとめることである

「覚悟」という言葉はもともと仏教用語で、辞書には「迷いを去り、道理をさとること」とあります。他に、「危険や困難を予想して、その心構えをすること」、そして「あきらめること、観念すること」があります

まず「生きる」こと。どんなにみっともなくても、「生きつづけ」「存在する」こと

歴史を振り返ると、いまの時代は、十五世紀後半に応仁の乱が起きる前に似ています。政情が不安で、地震も疫病も流行し、寛正の大飢饉では、京都だけで餓死者が八万人を超え、鴨の河原にはゴミのように死体が積みあげられました

発展の経済学、躁の経済から、後退しながら維持していく鬱の経済への思想が必要になってくる

人間は生まれたその時代の中で生きていくしかない

金持ちも貧乏人も、若い人も年寄りも、私たちは心の中にそれぞれの「恨」を宿していて、それを抱えて生まれ、生きて、死んでいくのです

親鸞の唱えた悪人正機説は、生きている人間はみな必ず悪を抱えているという意味であって、善人と悪人を隔て分けて、悪人こそすくわれると言っているのではありません。ただ、悪の背景には必ず「悲苦」があって、だからこそ阿弥陀如来という仏は、まず最もそれを多く味わっている人間からすくうのだと考える

だれでも最後は一人なのです。しかし、そのことが分かっている人間同士が身を寄せ合って一緒に何かをしていくからこそ共同作業というのは尊い

他者の面倒を見ずに人は生きられない

人間はDNAの二重螺旋構造のように、善と悪の両方を内包して、悩みながら生きていくしかない

一日生きるだけでものすごいことをしている。人は生きているだけで偉大なことなのだと思います

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『人間の覚悟』五木寛之・著 新潮社
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