2011年3月4日

『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』 ダニエル・カーネマン・著 vol.2417 

【22世紀に遺したい名著】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903063488

本日の一冊は、行動経済学の祖であり、2002年のノーベル経済学賞受賞者、ダニエル・カーネマンによる論文&記念講演。

行動経済学関連の本には、必ずといっていいほど引用される有名なカーネマンですが、じつは自身による一般向け書物はこれまで、ありませんでした。

本書には、カーネマンの、ノーベル賞受賞記念講演、ノーベル賞受賞時に発表された自伝、カーネマンの論文のうち、一般読者にもわかりやすいものを2本、訳出して一冊の本にまとめたもの。

土井も当初は、「原典を見るチャンス」くらいの軽い気持ちで手に取ったのですが、まさか読んで泣かされてしまうとは…。

泣かされた理由は、本書に掲載された、カーネマンの共同研究者、エイモス・トヴェルスキーへの追悼文です。

惜しいことに、カーネマンのノーベル経済学賞受賞を見ることなく、この世を去った人物ですが、この追悼文には、彼らの楽しい共同研究の様子と、「自由と規律」を重んじたエイモスの研究へのストイックな姿勢、そして自分とは違うエイモスを心から愛していたカーネマンの尊敬の念が、示されています。

「正しい方法でやろう」「大地の与えたもうものを受け入れよう」というエイモスの意思に従い、ひたすらに研究に邁進した2人。

本書には、その2人の友情の結晶とも言うべき、「プロスペクト理論」と「ヒューリスティクスとバイアス」研究、「効用概念の再検討と幸福」についての考察が含まれています。

これを読めば、われわれ人間がいかに間違いやすい存在なのか、そしてそれゆえに人生を台無しにしてしまいがちなのかがわかると思います。

偉人たちが発見した、人間の心理や判断力の脆弱さ。

本書は、21世紀を生きるわれわれに、新しい人間観と、幸福のとらえ方を教えてくれます。

そして、ビジネスであれ、研究であれ、何かに挑む人には、挑戦する際の正しい姿勢について。

自分が死んだ後、子どもたちにぜひ読ませたい一冊だと思いました。

みなさんも、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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直感は高度なことをするが、系統だったバイアスやエラーも犯す

知覚表象は、変化するもの、前とは違っていることに何よりも集中し、状態が同じであればそういう物事は基本的に無視する

ボウルを三つ用意して、一つには冷たい水、二つ目には暖かいお湯、三つ目にはその中間の温度の水を入れます。一方の手を冷たい水のボウルに、もう一方の手を暖かいお湯のボウルに浸けて、しばらくそのままでいます。その後で、中間の温度の水に両手を入れてみると、右手と左手の感じ方は違います

大多数の人は、賭けに勝つ可能性と負ける可能性が同じである場合、勝った時には、負けた場合に失う額の少なくとも二倍もらえるのでなければ、賭けをすること自体を断ります

◆プロスペクト理論
効用の担い手は変化であり得失であって、富の絶対量ではない

ある状況で人が決定や選択をする際、合計の代わりに単に平均値を当てはめてしまうことが時々ある

保有効果というもので、リチャードはこれを、一本の古いワインの例で示して見せました。このワインを、二〇〇ドルもらっても売りたくないが、もしもこの瓶が壊れたら、一〇〇ドルも払って取り替えるのは嫌だというものです

私が人生で笑った回数のたぶん半分以上は、エイモスと一緒にいた間のことだと思います

エイモスほど自由な人を私は他に知りません。彼があれほど自由でいられたのは、彼が同時に誰よりも規律ある人だったからなのです

自由の反対側にあるのは、自らのやることに喜びを見出す力と、避け得ないことには創造力をもって適応する力なのです

諦めることなく努力し続けられたのは、エイモスがしょっちゅう言っていたこの言葉のおかげでした。「正しい方法でやろう」。決して先を急がず、早く仕上げるために質を落として妥協することなど考えもしませんでした

「大地の与えたもうものを受け入れよう」という言葉の意味は、身の程を知り、問題を設定すること、すなわちそれが必ず解けることだと信じてはいけないという戒めだった

人は自分が「将来」何を好むかについては必ずしも分かっているわけではないし、中でもt1とt2の間の時間的な経過が長く、自分の置かれた状況や環境の差が激しい時には、もっともひどいエラーを犯しやすい

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『ダニエル・カーネマン心理と経済を語る』ダニエル・カーネマン・著 楽工社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903063488

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◆目次◆

第1章 ノーベル賞記念講演限定合理性の地図
第2章 自伝
第3章 効用最大化と経験効用
第4章 主観的な満足の測定に関する進展

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