2011年3月3日

『しかけ人たちの企画術』東京企画構想学舎・編 vol.2416

【仕掛け人たちの企画哲学とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844329863

出版業界で長く働いていたら、いつの間にか「企画」といわれるものに携わるようになっていました。

もともと自分はアイデア体質でもないし、優れたクリエイターの仕事を見ると、いつも圧倒されてばかりですが、それでも最近、ある程度のレベルまでなら、学習で何とかなるような気がしています。

学習すべきなのは、アイデアそのものと、アイデアの組み合わせのパターン。つまりインプットを増やして、そのインプットを組み合わせを工夫できれば、アイデアは自ずと浮かんでくるのです。

しかしながら、それだけでは、世間をアッと言わせる企画ができないのも事実。

そこで参考にしたいのが、本日ご紹介するこの一冊です。

この『しかけ人たちの企画術』には、『夢で逢えたら』や『トリビアの泉』、『SMAP×SMAP』、『爆笑レッドカーペット』などを手掛けた吉田正樹さんや、映画『おくりびと』の脚本を手掛けた小山薫堂さんなど、9人の「仕掛け人」が登場し、それぞれが企画の秘訣・哲学を語ります。

土井が読んでいてシビレたのは、「企画者はつねに「周縁」に身を置いていなくてはダメ」と喝破した吉田正樹さんですが、ほかにも地元を盛り上げようと奮闘する奥田政行さん、仕掛けのノウハウを緻密に語る嶋浩一郎さんの話は、参考になりました。

事例として面白かったのは、吉田正樹さんの『トリビアの泉』の演出の話、地元業者のために羊を売りながら、自分の店の宣伝もする奥田政行さんの目のつけどころ、そして静岡県の秘境・小和田駅に格安でポスターを掲示した嶋浩一郎さんの話。

小さなところから切り込み、大きく展開していく各人の企画アイデアには、思わず鳥肌が立ちました。

企画力をつけたい、と思う方には、ぜひおすすめしたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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いつも革新的になにかを起こすのは「周縁」の勢力なんですよ。人間というものは、「中心」になると安住してしまうんです。ひょうきん族”は、「周縁」であることを自覚して、「中心」に攻めのぼろうとした。だから、うまくいったんです。別のいい方をすれば、企画者はつねに「周縁」に身を置いていなくてはダメ(中略)自分とは別の「中心」が支配する現状を変えたいという「怒り」が必要なんです

テレビ番組をハードディスクに録画すると見ないで放置してしまうことが多くなるのと同じように、いつでも見られるものは、じつは有難味が小さいんです。となると、逆説的ですが、時間の制約から自由なネットでも、もっとも有難味があるのは「生配信」ということになる

◆以上、吉田正樹氏(テレビプロデューサー)

庄内の海では、波が少しでも高いと魚が獲れません。そういうときは、黒板のメインの部分を消して、魚より肉の欄を大きくします

アル・ケッチァーノにはランチ専用のメニューはありません。昼には、黒板の真ん中のパスタの部分のみを提供しているんです(中略)昼はパスタしか注文できないので、昼に来たお客さまは、黒板の両脇にあるほかのメニューを見て「あのメインの料理はどんな味だろう? この意味不明なメニュー、食べたい!」と想像します

庄内の特産品である「だだ茶豆」という枝豆の一種を食べて育てた羊で、食べてみると鳥肌が立つくらいにおいしい。でも、その生産者である丸山さんは自分の羊が特別だとは思っていない。それどころか、もう養羊は辞めようと考えている、といわれ、私は慌ててつぎの休みに高速バスで東京のレストランに売り込みに行きました

◆以上、奥田政行氏(「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフ)

「ボタン」はあくまできっかけ。そのあとには、目的が成し遂げられるように人がどう動いていくのかを緻密に想定した「シナリオ」が必要なんです

ネタがおもしろいから広まるわけで、「メディアに働きかける」から広まるわけではない

社会記号化したものは、とたんに大増殖する傾向がある

◆以上、嶋浩一郎氏(クリエイティブディレクター)

企画を考えるときは、「その企画は新しいか、その企画は楽しいか、その企画はだれを幸せにするのか」という3つのことを自問してほしい

◆以上、小山薫堂氏(放送作家、脚本家、東京企画構想学舎学長)

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『しかけ人たちの企画術』東京企画構想学舎・編 インプレスジャパン
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4844329863

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◆目次◆

第1講 吉田正樹(テレビプロデューサー)
第2講 後藤繁雄(編集者)
第3講 中村勇吾(インターフェースデザイナー)
第4講 奥田政行(「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフ)
第5講 箭内道彦(クリエイティブディレクター)
第6講 堂山昌司(マイクロソフト代表執行役副社長)
第7講 嶋浩一郎(クリエイティブディレクター)
第8講 片山正通(インテリアデザイナー)
第9講 小山薫堂(放送作家、脚本家、東京企画構想学舎学長)

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