2010年11月5日

『ゴールドマン・サックス(上)王国の光と影』 チャールズ・エリス・著 vol.2298

【これは傑作】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532167531

このBBMでは、通常上下分冊の本の場合、上下巻まとめて紹介するのですが、本日の一冊は、特別に面白いので、ひとつずつ丁寧に紹介します。

テーマがあのゴールドマンサックスで、著者が『敗者のゲーム』を書いたチャールズ・エリス。

これで面白くならないはずがない、と思って手に取ったのですが、予想以上の面白さに、すっかりハマってしまいました。

※参考:『敗者のゲーム』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532350689

貧しい牛飼いの息子として育った創業者のマーカス・ゴールドマン、同社のビジネスの基礎を作ったサム・サックスとヘンリー・ゴールドマン、カリスマ性だけでのし上がり、世界恐慌時に過去最悪の損失を出したキャッチングス、そして同社を窮地から救った「ミスター・ゴールドマン・サックス」ことシドニー・ワインバーグ、ブロック・トレーディングの寵児として知られるガス・レビー、同社のマネジメントの仕組みを作ったジョン・ホワイトヘッド…。

個性あふれる登場人物とエピソードだけをとっても、優れたノンフィクションですが、ビジネスを発展させるためのヒントとしても、有用な記述が満載です。

新参者がどうやって自社の競争優位を確立するか、サービスとはどうあるべきなのか、優れた組織を作るための規律とは…。

刺激的なドラマあり、経営の要諦あり、投資の教訓あり。

最近読んだ中では、圧倒的に読み応えのある一冊です。

これを読まないのは、はっきり言ってもったいない。
ぜひ今すぐ買って読んでみてください。

明日は下巻を紹介します!

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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不安に駆られた預金者が、銀行から貯金を引き出そうと長い行列を作った。彼(シドニー・ワインバーグ)はその列に並び、銀行のド
アが近づくと、後からやってきた必死の預金者に彼の場所を売り、すぐさま、また列の後尾につき、ドア近くまで行くと同じことを繰
り返した

サム・サックスとヘンリー・ゴールドマンはもっとも重要な業務、CPのビジネスを築くことに注力を続けた。ヘンリーはのちに息子に訓戒している。「この得意分野を、けっしておろそかにしてはならない」

もし(引受業務の)市場がわずかでも扉を開けていたなら、ゴールドマン・サックスはすでに最盛期を過ぎたビジネスでシェアを取ろ
うとして何年も苦労し、長い長い衰退に巻き込まれていたことだろう。いくつもの投資銀行が倒産していった

キャッチングスのカリスマ的な楽観論、大胆な行動を好むスタイルのおかげで、ゴールドマン・サックスはその名を市場で知られるようになった。そして、途方もない失敗を世間にさらすことになる

一九三一年には、ゴールドマン・サックス・トレーディングの損失はほかの投資信託の損失をはるかに上回っていた。投資信託大手一四社の損失合計は一億七二五〇万ドルであったが、ゴールドマン・サックス・トレーディングはその七割を占める一億二一四〇万ドルだった

二流の会社を顧客にして仕事をすることを、ワインバーグは彼らしい言葉で表現している。「犬と寝りゃ、蚤で目が覚める」

「ミスター・ワインバーグはマスコミに取り上げられることをとても嫌っていた」とボブ・メンシェルは言う。「仲間内の競争をいやがり、何をしているかをメディアに話すことは厳禁だった。『もしそれが仕事のプラスになると思うのだったら、それは考えが甘い。マスコミは知りたければ、なんでも探り出すものだ。自己満足のためだったら、勝手にやってくれ。だが、忘れるんじゃない。君がうまくいっているときに称賛する同じメディアが、落ち目になると足蹴にするんだ』」

ゴールドマン・サックスでは全員が朝七時には出社していた。みんな自分の意思でそうしていた。そうすることで、ほかの会社との違いを感じていた。違うんだ、と信じていた。ガスは毎日会社に一番乗りすることで社内に基準を作っていた

リーダーは二つのことで判断される。採用して組織に受け入れる人材、そして究極の選択を迫られたときの信念、この二つである。人が何を信ずるかは、そうすることで犠牲を強いられることがわかっていても行動するかどうかで、初めてわかる

売り手をつかんでいるという評判の会社は買い手を惹きつける。そして買い手をつかんでいるという評判の会社は売り手を惹きつける

「ウォール街には古くからの言い伝えがある。今でも通じることだが、上手に買えば半分売れたも同然だってね。それが取引のコツさ」社内ではレビーはもっと露骨に表現した。「上手なトレーダーはカナリアのように食って象のように糞をする」

皮肉なことに、シドニー・ワインバーグが投資銀行業務を築き上げ、弟子であるジョン・ホワイトヘッドがそれを陳腐化させた。二人はそれぞれのやり方で、彼らの時代にゴールドマン・サックスを成功に導く牽引車となった

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『ゴールドマン・サックス(上)王国の光と影』チャールズ・エリス・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532167531

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◆目次◆

第1章 使い走り
第2章 惨事
第3章 ミスター・ウォール街
第4章 フォードのIPO
第5章 すごいボス!
第6章 ガス・レビーの人脈
第7章 ペン・セントラルの崩壊
第8章 販売力の強化
第9章 ブロック・トレーディング
第10章 投資銀行の改革
第11章 企業理念
第12章 二人のジョン
第13章 初期の債券ビジネス
第14章 大金持ちを狙え!
第15章 Jアロン 醜いアヒルの子
第16章 買収防衛
第17章 調査の利用と悪用
第18章 ジョン・ワインバーグ
第19章 海外音痴

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