2010年11月19日

『すべては戦略からはじまる』西口貴憲・著 vol.2312

【「投資のコロンビア」から待望の講義本!】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478014566

先日、とあるパーティに参加した時、ヒットメーカーである、ダイヤモンド社の高野倉副編集長と偶然お会いして、こんなことを言われました。

「土井さん、最近地味に売れている本があるんですよ。ストーリー形式の戦略の本なのですが、これが面白くて…」

あのベストセラー『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』を手掛けた高野倉さんが言うんだから、よほど面白いんだろうと思ってチェックしてみたら、いやはや、いかにも「狙った感」のある、どちらかというと「外しそうな」ビジネスストーリー物の装丁。

※参考:『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447847088X

「これはひょっとしてハメられたか?」と思いながら読んでみたら、これが大当たりでした。

経営戦略、4P、SWOT分析、組織分析フレームワークの7S、PPM、戦略ドメイン…。

ビジネス書を読んでいる方であれば、思わず「そんなの知っているよ」と言いたくなるトピックスですが、これがストーリーを読むだけで、本当に使いこなせるレベルまで理解できるのです。

ストーリーのあらすじを簡単に説明すると、舞台は瀕死のゲームソフト会社、K&H。創業者が病死して以来、低迷を続ける同社に、主人公の今井慎也と、MBAを持つ有能キャリアウーマン、高嶺舞が乗り込むという設定。

社内政治のうまい営業部長の近藤と対立しながら、2人はK&H社を勝利に導くという、そんな流れです。

主人公2人の会話に、さり気なく理解テストが盛り込まれ、完全に理解してから戦略の深い話に進むという流れになっており、戦略センスを身につけるには最適の教材。

2人のラブストーリーも楽しみながら、一気に読み進められる、じつに興味深い読み物です。

ストーリーとして見れば、説明調の部分が多く、セリフもまだまだ荒削りですが、アイデアがじつにいい。

現在、社内の人間関係や売上の鈍化で行き詰っている会社も、そのすべては戦略に原因がある、ということに気づかされるでしょう。

ぜひ、読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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いまの近藤部長の話は、単に数字目標を並べたために過ぎないわ。具体的にどうやって、その目標を達成するのかという行動計画が述べられていないのよ

自ら無理だと思っているところに強引な営業をかけても、結果は見えているわね

三大経営資源の配分は、経営戦略がないと決められないのよ

経営戦略がないことによる弊害は、経営資源の配分に問題をきたすだけじゃないのよ。甘く考えてちゃダメ

経営理念がないことには経営戦略を作ることはできないのよ

プラットフォームメーカーはロイヤリティ収入を見込んでいるからこそ、ゲーム機本体を原価割れでも売れる

外部環境は(1)マクロ環境、(2)競合、(3)市場に分けることができるの。この3つを捉えると、より詳細に外部環境を分析できるのよ

◆マクロ環境を分析するPEST分析
・政治(Politics)
・経済(Economy)
・社会(Society)
・技術(Technology)

調査会社を使えばこんな資料は簡単に作れるわ。使わなければならないところには、お金を注ぎ込むべきなのよ

◆組織分析フレームワークの7S
ハードのS、ソフトのSというのがあるでしょう? この中でハードのSというのは、比較的企業が変えやすいもの、ソフトのSは、比較的変えにくいものといわれているわ

K&Hの経営理念は『遊びの創造を通じて、世界の人々に高度な知的興奮を提供する企業をめざす』だったな。ということは、K&H
が知的興奮を与えられないゲーム制作を戦略ドメインに設定するということは、あってはならないんだな

リーダーにとっては市場を拡大させることが利益につながる

組織内に無駄があるほど、その余分な力を生かすために違う分野に進出する可能性が高まるのよ

機能別組織ではトップしか全体を統括できないの。だから機能別組織では、分権化が起こらずトップに権限が集中する傾向があるのよ

(事業部制組織では)事業部間が疎遠になることによって、企業内にダブって投資が行われるなどのムダが発生する可能性もある

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『すべては戦略からはじまる』西口貴憲・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆

第1章 会議は踊るいつまでも
第2章 舞先輩のマル秘作戦
第3章 なぜ、営業のプロが素人に負けたのか
第4章 数字で会社を裸にする
第5章 会社を取り巻く環境をつかむ
第6章 会社はどこに向かうべきか
第7章 新規事業を模索する
第8章 決戦の場はどこだ?
第9章 いざ戦略へ!
第10章 競争に打ち勝つために
第11章 会社はどこから変えていくか
第12章 マーケティング戦略で事業を強化せよ
第13章 事業パートナーの離反を止めよ
第14章 オンラインゲーム事業部の苦闘
第15章 生まれ変わるK&H

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