2010年9月24日

『ドケチ道』山田昭男・著 vol.2256

【ケチにも優先順位がある?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492521895

本日の一冊は、年商200億円の上場企業にして、通称「日本一のドケチ企業」、未来工業の「ドケチ戦略」を、創業者の山田昭男氏がまとめた一冊。

引きひもスイッチ式の蛍光灯や、ドアノブをはずしたドア、警備員のいない警備員室、線の切れた固定電話など、冒頭、吐き気がするほどの苛烈な「ドケチ作戦」が出てきますが、ここで疑問に思うのは、「こんな会社でなぜ社員は辞めないんだろう?」ということ。

その答えは、じつは2章以降でわかります。

2章以降では、あれほどドケチ一辺倒だった著者が一転、「意外な」太っ腹ぶりを披露するのです。

60歳ピーク時の給与が維持される定年延長制度、年間休暇140日、育児休暇3年、1日7時間15分の勤務時間…。

さらにビックリしたのは、著者が創業者利益を捨て、社員に額面で株式を売り渡したこと。

これにより、未来工業の社員には「1億円株主」がたくさん生まれ、マスコミの話題をさらったそうです。

怠惰な浪費で社員を甘やかすよりも、給与と休日できちんと報いる。高価なお中元やお歳暮を送るよりも、顧客サービスで差をつける。

自立した社員を育て、組織を成功に導いた著者らしい、骨太な「ドケチ戦略」に、最後はすっかり魅了されてしまいました。

コスト意識の高い社員を育てたい経営者に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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うちの会社の蛍光灯の多くは、引きひもスイッチ式。廊下の電灯は、夜まで禁止。仕事をしている人が席をはなれるときには、自分の頭上の蛍光灯のスイッチを必ず切るためだ。ひもの先端に名前入りタグが結ばれているのは、自分の蛍光灯を管理する責任感を、社員たちにもってもらうための意識づけ。ちなみに、相談役室近くのフロアの蛍光灯のスイッチ(これは普通のスイッチ)は、それを隠すように上に白い紙が貼ってあって、「さわるな、バカ!!」と、わたしが書いた

ウチは主にローテクの電設用品メーカーで、商品単価も安い。泥棒に入られて会社がこうむる損害より、どう考えても警備員の人件費のほうが高くつく

業務課の女性社員たちに、「『お待ちください』禁止令」を出した。問い合わせの電話をかけてきてくれたお客さんに対して、「お待ちください」という言葉を使ってはならないぞ、ということ。まずは、ウチの製品機能や性能、その価格や材質などについて知識を深め、製品番号もしっかりと覚える。そのうえで、お客さんからのどんな問い合わせにも、営業マンの代わりに、すぐ的確に答えられる。彼女たちにそんなプロフェッショナルになることを求めた

会社の経費だけでなく、お客さんの通話時間と電話料金をケチること、それも立派な顧客サービスだ。それはお中元、お歳暮以上だと思っている

ドケチとは、社員にコスト意識を植えつける最良の教育

自社の売上げに見合った規模の営業チームを組織すれば、自社営業と、中小問屋へのおろしだけで、身の丈にあった商売はできる

会社のムダを本気で減らしたい、できれば一掃したいと思うのなら、経営者や幹部自身が自分たちの無駄遣いを率先して改めるべき

有給休暇40日余りを除いて、年間140日前後の休日。7時間15分という日本一短い労働時間。大手ハンバーガーチェーン店みたいな「名ばかり」管理職も、派遣社員やパートもいない。全員が正社員。そのうえ、育児休暇は3年

出張費は渡し切り方式がおススメ(中略)宿泊費なら1人1泊1万円。それ以下のホテルに泊まり、差額を自分のお小遣いにしてもかまわない(中略)頭を使えば自分の得になるから、人は一生懸命に考える。それが「常に考える」習慣づけになる

◆「3ナイ」主義
「教育しない」「管理しない」「強制しない」

他人が考えつかないアイデアを生むには、他人とは違う体験や時間の過ごし方、あるいは、誰にも真似できない着眼点や感受性が必要。いずれも、ぎちぎちな管理からは生まれにくい違う失敗は100回でもOKだが、同じ失敗は2回で降格

会社都合で社員の既得権をないがしろにしてはいけない

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『ドケチ道』山田昭男・著 東洋経済新報社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492521895

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◆目次◆

第1章 ドケチとは、社員にコスト意識を植えつけること
第2章 社員をやる気にさせる「反ドケチ」作戦
第3章 自主性と自覚をもったプロ社員の「反ドケチ」な育て方
第4章 ミライイズムは終わらない
第5章 「勘違いドケチ」をしてはいけない

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