2010年1月30日

『節約の王道』林望・著 vol.2021

【お金をおろすなら3万4千円?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532260574

本日の一冊は、昨年十月に出され、話題となったリンボウ先生こと林望さんの、節約本。

といっても、内容はお金との付き合い方や、生活のちょっとした工夫、そして粋な人生を歩むためのヒントです。

かつて土井は、大学に入学する時、親にこんなことを言われました。

「オレが稼いだ金でお前に時間を買ってやるんだから、アルバイトは絶対にするな」

土井はこの会話のおかげで、経済学を学ぶ前に「機会費用」の概念を学んだわけですが、本書にも、同様の話が掲載されています。

いわく、「アルバイトをするということは、せっかく親が買い取ってあげた時間を、子どもがまた社会に売り渡してお金に変えてしまうということ」。

われわれが「節約」という時、考えなくてはいけないのは、目に見える単純なコストだけではありません。

その活動に付随してくるコストは何なのか、その活動は持続可能か、お金を節約したことにより失われる投資機会…。

こういったことを考えずに、本当の意味での「節約」は語れないのです。

本書を読んだ方は、著者のスノッブな主張に、うんざりするかもしれません。あるいは、「金持ちの論理」「みみっちい節約話」と敬遠するかもしれません。

しかしながら、土井が見る限り、本書には、お金の本質を知るためのさまざまなヒントが隠されています。

たとえば、「食費を削りたいと思うなら、さまざまな調理法を知っておくこと」という話。

現在のビジネス界ではさまざまなものがアウトソース化されていますが、調理法を知るだけで、外にお金を払わずに済むことだってたくさんあるのです。

また、「家族団欒こそが、一番金の掛からない、究極の趣味」という主張も、「他人化=ビジネスチャンス」という現代のビジネスの質をえぐっていて痛快です。

賛否両論分かれる本だと思いますが、文章も読みやすく、一読してみて損はないと思います。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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イギリスには、“inverted snobbery”という言葉があります。直訳すると「反転した紳士気取り」ということで、これは大金持ちなのにわざと古めかしいボロコートを着ている、みたいなことです。ちょっと嫌みではありますが、イギリスの上流階級にはそういう気風があることも事実です

同僚よりも良いところに住みたい、あの人よりも素敵な服を着たい、そういう気持ちで生きることは、結局その人自身を苦しくさせます。人間の欲望というのは限りなく、もっと良い家、もっと良い車、と上を見ればまた限りがないからです。だからこそ、ブランドや人の目に惑わされることなく、しっかりと「自分の軸」を持って、衣食をまかなう、ものを選ぶ。こうした暮らしのほうが、よほど充実して楽しく、また美しい生活だと思う

大切なのは、「食材を使い切ること」。買った食材は余さず使い、冷蔵庫が空っぽになるまで次を買いに行かないと決めておくことです。なかには、食材を買うときの十円二十円にこだわるのに、買った食材を結局腐らせているという人もいるようですが、それでは元も子もない

食費を削りたいと思うなら、さまざまな調理法を知っておくこと

外食は「五日間食べ続けても懐が痛まない」額で

「万札を崩してはならない」という意識。だからこそ、お金をおろすときは「三万四千円」。これこそ人間の心理をついた、なかなかうまい節約術だと思うのですが、いかがでしょうか

金は正業を以て稼ぐ

一番いいプレゼントというものは、結局お金には換えられないもの

日ごろから、どんなものがどれくらいの価格で出ているのか、その相場をよく知っておく。良い物を見分ける目を養っておく。常日頃よりそういう力を身につけておけば、「これぞ」と思うものが出たときに、躊躇なく買うことができるこの不況のおかげで、会社の交際費も残業代も削られて、接待も飲みに行く機会も減って、世の男性が家にいる時間を多く取れるようになった。これを私は非常にいいことだと思っているのです。不況がもたらした最大のメリットだと言ってもいい

アルバイトをするということは、せっかく親が買い取ってあげた時間を、子どもがまた社会に売り渡してお金に変えてしまうということ

若い時代に一番大事なのは、一生通用するような技能を身につけるということです。そのための土壌作りのためにどんどんお金を使うこと、節約したお金は自己投資に回すべきです

病気にならないことが何よりの節約である

中高年のおしゃれというのは、足すことではないと思います。引き算をすることこそが粋なのです。そもそも、何かを付け加えることばかりしていると、だんだんとそれを引くことができなくなっていきます。そして、それを取り外したときに、非常にみっともないことになる

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『節約の王道』日本経済新聞出版社 林望・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532260574
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◆目次◆
序 章 節約は楽しい
第一章 食─節約食とはすなわち健康食である
第二章 お金の管理─万札は、崩さない
第三章 交際費─虚礼に金を費やすな
第四章 衣服と車─見栄ほど醜いものはない
第五章 旅行、趣味─金はなくとも余暇は楽しめる
第六章 教育─人生最大の投資と捉えよ
第七章 住まい─自分の軸を揺るがすな
終 章 節約と人生

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