2009年8月27日

『実践行動経済学』 リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン・著 vol.1865

【人の選択は誘導できるか?】
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「今日は何を食べようか?」「仕事帰りに何をしようか?」

われわれは日々、選択の必要性に迫られ、「自分で選択した」気になっています。

でも、行動経済学によると、どうやら私たちの選択というのは、ある程度操ることができる。

本日ご紹介する一冊は、さり気ない誘導で、人間がどれほど選択を変えてしまうのか、その恐ろしい実験の結果を示した一冊です。

たとえば、われわれはスターバックスに行った時、ショーケースから好きな食べ物を選んで食べた気になっていますが、実際にはこの選択は、商品の配置によって変わることが多い。

また、パーティなどでは、器の大きさを調整することによって、参加者の食べる量を増減させることもできるのです。

ほかにも、「太り過ぎの友人がたくさんいる人は太り過ぎになる可能性が高くなる」「万能洗剤の匂いをかぐと、人は食事中に周囲をきれいにするようになる」など、衝撃的な実験結果が満載。

われわれの選択の欠陥を知るのに、じつに有益な一冊です。

さすがに行動経済学モノは出過ぎた感がありますが、まだ読んだことがない、という人はぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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食べ物を置く場所は学校ごとに変え、ある学校では目線の高さにフライドポテトを置き、別の学校ではニンジンスティックを置いた。(中略)カフェテリアの配列を変えるだけで、数多くの食品の消費量を最大で二五パーセントも増減できたのだ

優秀な設計者なら知っているように、トイレをどこにつくるかという、これといった根拠がなさそうな意思決定が、校舎を使う人々がどのように相互交流するかに微妙な影響を与える

アムステルダム・スキポール空港の男性用トイレがある。空港の小便器には黒いハエの絵が描かれている。男というものは用を足すときにはどうも注意が散漫になるようで、周囲を少しばかり汚してしまいがちだが、目標があると注意力が格段に高まり、精度も大幅に向上する(中略)スタッフがハエ実験を行った結果、ハエマークの効果で飛沫の汚れが八〇パーセントも減ることが明らかになった
一つは「決して惰性の力をあなどってはならない」、もう一つは「その力は利用できる」──である

人には自分がいま現在もっているものに強く固執する傾向がある

数多くの実験で、「一〇〇人のうち九〇人が生きている」という情報と、「一〇〇人のうち一〇人が亡くなっている」という情報とでは、内容はまったく同じなのに、人々の反応はかなり違ったものになっている

白線が最初に現れるときは等間隔で引かれているが、ドライバーがカーブの最も危険な部分に近づくにつれて白線の間隔は短くなり、走行速度が上がっているような不安感を与える。すると人は本能的に減速する

食事は思慮抜きの活動の代表例の一つであることがわかっている。私たちの多くは目の前に出されたものならなんでも疑いなく食べる

皿が大きかったり容器が大きかったりすると、食べる量は増える

人は長年かけて貯めたお金を使う場合より予想外の収入があったときのほうが、贅沢な高額の買い物をして散財する可能性がずっと高い

太り過ぎの友人がたくさんいる人は太り過ぎになる可能性が高くなる

万能洗剤の匂いをかぐと、人は食事中に周囲をきれいにするようになる

環境保護の文脈では、人は自分が正しいと信じていることをするのは、そうしているのをほかの人が見るとわかっているときである場
合が多い
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『実践行動経済学』日経BP社 リチャード・セイラー、キャス・サンスティーン・著
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◆目次◆
はじめに──「自由放任」でも「押しつけ」でもなく
第1部 ヒューマンの世界とエコノの世界
第1章 バイアスと誤謬
第2章 「誘惑」の先回りをする
第3章 言動は群れに従う
第4章 ナッジはいつ必要なのか
第5章 選択アーキテクチャー
第2部 個人における貯蓄、投資、借金
第6章 意志力を問わない貯蓄戦略
第7章 オメデタ過ぎる投資法
第8章 “借金市場”に油断は禁物
第3部 社会における医療、環境、婚姻制度
第9章 社会保障制度の民営化──ビュッフェ方式
第10章 複雑きわまりない薬剤給付プログラム
第11章 臓器提供者を増やす方法
第12章 われわれの地球を救え
第13章 結婚を民営化する
第4部 ナッジの拡張と想定される異論
第14章 一二のミニナッジ
第15章 異論に答えよう
第16章 真の第三の道へ
あとがき──ヒューマン投資家と二〇〇八年金融危機

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