2009年3月15日

『超訴訟社会』平野晋・著

【超訴訟社会】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/482841469X

以前、スタッフと一緒に韓国料理屋に行った時、隣に座っていた40代の女性が、韓国人のスタッフに激しくクレームをつけていました。

せまいお店に2人で来ているのに、「お皿が多いんだから、もう一つテーブルを使わせなさいよ」と言って、混んでいるのに4人掛けの席を占領する。

絶対に食べ切れないほど頼んでおいて、余ったから「お土産にして。早く」とせかす。

挙句の果てに、包むのが遅いと言って起こり出す始末。一緒にいる母親と思しき女性も、まったく口をはさめない。

その様子が同じ日本人として許せなかったので、スタッフとの会話を装いながら、こう話しました。

「なあ、ホスピタリティの日本語訳って知ってるか?」
「え、知りません」
「過保護っていうんだよ」

それを聞いて、少しやわらいだようですが、本当に最近は権利ばかりを主張する人間が増えて、困ったものです。

本日の一冊は、中央大学総合政策学部教授であり、米国(NY州)弁護士でもある著者が、「訴訟大国」アメリカの実態をレポートしつつ、日本社会の方向性を示唆する、注目の一冊。

「珈琲が熱すぎる」といって訴えられたリーベック事件や人種問題ゆえに無罪評決がくだった「ロドニー・キング事件」「O・J・シンプソン事件」を題材に、裁判がどうあるべきか、社会がどうあるべきかを説いた一冊で、今後のわれわれの生活やビジネスを考える上で、示唆に富んだ内容です。

もっとレアな事例や、深く考えさせる部分があればなお良かったのですが、現在の日本が立たされている状況を考えるのには、有用な一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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日本が「権利偏重」な法化社会になって来たから、教師は子供を叱らなくなり、産婦人科医は分娩をしたがらなくなってしまった。つまり日本も、アメリカのように誰もが誰かに訴えられる「濫訴社会」になって来た

兵隊が増えると平和が失われ、警察が増えると自由が奪われる。小稿「”法と文学”と法職倫理」『国際商事法務』三〇巻五号より

日本の裁判員制度はアメリカと大きく異なり、重大な刑事事件しか扱わない

「ロドニー・キング事件」では、白人のみで陪審員が構成される地域で裁判を行ったことが、アフリカ系アメリカ人への集団暴行罪を問われた四名の白人警官たちを無罪評決に導いたのだという話が、まことしやかに囁かれたりもする

人権問題も取り沙汰された有名事件は、いわゆる「O・J・シンプソン事件」である。アメリカン・フットボールのスター選手でタレントでもあったアフリカ系アメリカ人である被告人は、白人女性と離婚。その後、彼女とその愛人を殺害した(第一級殺人の)容疑で起訴され、その陪審裁判の模様が全米に放映された。被告人が前妻に対してDV(ドメスティック・バイオレンス)をしていたことや、被告人がいわゆる「セレブ」だったことから事件はスキャンダルとして華やかに巷で論議された(中略)事件はちょうど「ロドニー・キング事件」の後だった。つまり「人種」というカードが説得力を持ったという説もあり、一九九五年、無罪評決が下った

日本における弁護士数は、先進諸国と比べると異様なほど少ない

アメリカの独禁法学者の研究によると、国家が規制を緩和し、生産量を増やして生産者に対し自由な競争を促すと、どんな業界でも生産量制限のための「言いわけ」をするそうだ

弁護士も人間である以上、他の職業と全く同様に、高い対価がもらえる仕事に集中する。だから有能な弁護士ほど、高い対価を支払える依頼人や組織、企業などに仕える

教育や医療は、その役務を受ける人々が敬意を抱いてくれなければ、信頼関係も説得力も失い、有効に機能しない

持ち帰り用のおいしい珈琲が欠陥品扱いされると、市場で入手出来なくなる。すると、大多数の良識ある消費者から、「持ち帰り用のおいしい珈琲」を奪うことになる

訴訟よりも社会に必要な規範は、「道徳、礼節、倫理規範と呼ばれるルール」である

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『超訴訟社会』ビジネス社 平野晋・著
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◆目次◆
はじめに
第一部 法化社会の真実
第一章 裁判員制度と陪審員制度
第二章 司法へのアクセス(弁護士)問題
第二部 「濫訴社会」が上陸する
第一章 「権利の偏重」が招く恐ろしい未来
第二章 訴訟好きなアメリカ人
第三章 珈琲訴訟とPL危機
第四章 濫訴社会の原因
おわりに

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