2009年1月14日

『「日本の経営」を創る』三枝匡、伊丹敬之・著

【閉塞感を打ち破り、「競争力」を取り戻すヒント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532314224

本日の一冊は、ミスミグループ本社代表取締役会長兼CEO、三枝匡さんと、東京理科大学総合科学技術経営研究科教授の伊丹敬之さんによる夢の対談。

同じ一橋大学の同期生であり、スタンフォード大学で再会したという2人が、学者と実務家、双方の立場から日本の経営を論じる、という趣旨の対談で、アメリカ流経営に絶望した現在の日本の経営者に、新たな希望を与えてくれる内容です。

とはいえ、決して日本的経営を礼賛するものではなく、アメリカ流の何がまずいのかを指摘すると同時に、日本がなぜ凋落したのかを冷静に分析し、今後の課題を提示する内容となっています。

何事においても、学ぶには原理原則と実践の両方を学ぶ必要があると考えていますが、本書はその点でバランスのとれた一冊です。

研究者の立場から、今後のあるべき経営を考察する伊丹さんと、過去の現場体験から、実務上の問題点や成功の秘訣を語る三枝さん。

2人の対談を読んでいるうちに、現在の日本の経営の問題点が浮き彫りになる、そんな内容に仕上がっています。

戦略の問題、人事の問題、コミュニケーションの問題、そして経営者人材育成の必要性…。

現在の閉塞感を打ち破るためのヒントは、すべてこの一冊にある、といっても過言ではありません。

経営者の方、そして将来経営者を目指す意欲的なビジネスパーソンに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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日本企業の経営が最近はアメリカ流に振れ過ぎているのではないか(伊丹)

企業が得た利益のうち自社の内部投資や競争力強化に向ける分を削り、株主に目先で喜んでいただこうと過度に高い配当性向を続ければ、その企業は結局、市場競争の中で自ら弱体化し成長性を失っていきます(三枝)

ジャック・ウェルチは、会社を買収したら九十日で体質変換を完了して支配下に置くことを原則にしましたが、そんなやり方はその会社の良い面、つまりその会社の「らしさ」まで壊してしまう(三枝)

アメリカは参加の国であり、その「意図的参加」ということの裏返しとしてその参加対象に不満があるときには「退出」という形で不満への抗議表明をする(中略)告発によって自力回復のメカニズムが機能しうるかもしれないのに、退出をしてしまって放置される組織が多く出てくることになってしまう。それが、アメリカ流経営の弱みになる(伊丹)

会社の成長性を維持するためには、ライフサイクルの比較的若いステージにある事業や商品のタネを追いかけ、果敢に新事業や新投資を敢行しなければならない(三枝)

若手の育成が非常に難しくなってしまったのは、結局、組織上層に上がっていった人たちが、仕事の権限を自分で抱えたまま上がっていったからなんですよ(三枝)

経営者人材というのは、経営的な打ち手としてどのボタンを押したら、どんなことが起きるかっていう経営の因果律」みたいなものを、頭の中にたくさん貯めることが大切(伊丹)

「事業と恋に落ちるな。ダメなものはさっさと売ればいい」。その一言を聞いて、私の心はジャック・ウェルチに対する軽蔑の気持ちでいっぱいになった。一体この世でどれほどの新商品や新事業が、それに「惚れ込み、恋に落ちて、人生を賭けた」開発者や事業家たちによって、ときには塗炭の苦しみの中から、最後の成功の陽の目を見たことであろうか。その開拓者精神を否定し、計算ずくの「転売経営」を行う先に、一体人類の長期の繁栄があるのだろうか(三枝)

「一人の経営リーダーが自分の事業を生き生きと保てる組織規模」にまで分解してしまえ(三枝)

人減らしを小出しに二度三度繰り返すのは、社員の士気が下がって経営に対する猜疑心が強まり、組織を盛り返すチャンスが遠のく(三枝)

人は、エリートというレッテルを貼られた瞬間から、エリートとして育つ気構えを初めて持つ。だから、レッテル貼りが実は大きな意味を持っている(伊丹)

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『「日本の経営」を創る』日本経済新聞出版社 三枝匡、伊丹敬之・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532314224
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◆目次◆

まえがき
第一章 アメリカ流経営、九つの弱み
第二章 「日本的経営」も威張れたものではない
第三章 論理化する力・具体化する力
第四章 日本における「経営の原理」
第五章 「創って、作って、売る」サイクルの原理
第六章 人の心を動かす戦略
第七章 事業の再生、大組織の改革
第八章 抵抗勢力との闘い
第九章 失われてきた経営者育成の場
第十章 今、求められる経営者人材
あとがき

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