2009年1月15日

『「依存症」の日本経済』上野泰也・著

【恐慌の後に来るビジネスチャンスは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062821028

本日の一冊は、「日経公社債情報」エコノミストランキングで6年連続第1位、「東洋経済統計月報」でもマーケットエコノミスト予想的中度総合1位に選ばれた著者が、「10年先の日本」を描き出した一冊。

日本経済にまつわるあらゆるトピックスを、「依存」というキーワードで読み解いており、日本経済が何に依存しているのか、今後その構造がどう変わって行くべきなのかを、独自の視点で示しています。

本書がおもしろいのは、ただ経済を分析するだけにとどまらず、そこからビジネスのヒントまで導き出されている点。

以前、ある経済誌の編集長が講演で「なぜかゼネコン特集が売れるんですよね」とおっしゃっていましたが、それだって、本書を読めば一発でその理由がわかってしまいます。

ビジネスであれ、出版であれ、メガヒットを生み出すには、「塊」をとらえること。

本書はそういう意味で、日本経済が何に偏っているのか、どこにヒットを生み出す「塊」があるのかを知る、いいヒントとなります。

しかも嬉しいことに、著者の分析が細かい。

たとえば「学習塾費」ひとつをとっても、「補助学習費」という細目別に見て、さらに平均値だけで見るのではなく、年収別に見た格差などを論じ、「年収400万円未満の家庭が6万1000円であるのに対し、年収1200万円以上の世帯では24万7000円」といったように、実態をとらえられるレベルまで徹底して追っていく。

ここまで書いてもらえば、賢いビジネスマンなら、きっと自分のビジネスに活用できるはずです。

お堅い経済解説本と思うなかれ。本書は、これからビジネスチャンスをつかみたい経営者、起業家にこそ読んで欲しい一冊です。

それと、秋田県出身者には、秋田が「10年後の日本」として紹介されているので(もちろん反面教師として)、要チェックです。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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日本経済をさまざまな角度から分析する際に、それがいったい何に「依存」しているのかを考えてみる視点は非常に重要である

百貨店業界では昔から、婦人服ではなく、「背広など紳士服の売り上げが伸びてくれば景気回復は本物」と言われている

百貨店では、株価に左右されやすい「プチ富裕層」やキャリアウーマンが消費を減らしたとの見方が多い

◆GEコンシューマー・ファイナンスのサラリーマンこづかい調査
最新調査の結果(2008年4月)は、4万6300円(前年比▲2500円)

交際費等の支出が多いのは、規模別では中小・零細企業

民間住宅投資がピークをつけたのは、すでに述べたように景気対策で住宅取得促進策が打ち出された1996年度の27兆9195億円。最近では17兆~18兆円台に減少している。日本は人口減少社会入りした後も、世帯数がなお増加を続けているため、危機感はまだそれほど感じられない。だが、この先、世帯数も減少に転じてくると、衣食住という基礎需要のうちの「住」について、需要減少によるデフレ圧力が一層強く感じられるようになるだろう

仮に、建設業の就業者数がピークから42%減少すると約397万人になり、2007年実績の552万人から、あと155万人減る計算になる。それがそのまま完全失業者に上乗せされるとすれば、07年に3.9%だった完全失業率は、6.2%に跳ね上がると試算される

表面的には、原油高・食品高といった外からのショックで消費者物価上昇率が高くなっているものの、これは一時的な現象であり、「本物のインフレ」ではない(中略)内実は、過剰供給体質のもとで、デフレ圧力ないしはデフレ体質が根強く存在している

そもそも、食料自給率の高低にこだわるべき理由はあるのだろうか(中略)自由貿易における比較優位を考えると、他国よりも生産性が低い農作物については輸入に頼って、より生産性が高いものに特化するほうが、経済全体のパフォーマンスは向上するはずである

いまや香港は、日本にとって最大の農産物輸出先になっている

景気が悪い時ほどマスコミ報道に国民の関心が集まり、景況感に大きな影響を及ぼす

「投資から貯蓄へ」とマネーが逆流

日本経済の輸出依存は、大胆な人口対策が今後とられでもしない限り、人口動態から見て、もはや宿命に近い

秋田県の婚姻率、出生率、人口の自然増加率は、どれも全国で最下位

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『「依存症」の日本経済』講談社 上野泰也・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062821028
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◆目次◆

はじめに
第1章 日本の個人消費は「女性依存」
第2章 お父さんのこづかい減少でわかる「交際費依存」体質
第3章 なお残る「建設業依存」と構造調整圧力
第4章 食料の「海外依存」は本当に問題なのか
第5章 緩和への熱が冷め「規制依存」に逆戻りする日本
第6章 教育はどこまで「学習塾依存」を強めるのか
第7章 景気判断や買い物で「マスコミ依存」する日本人
第8章 投資に移行しにくい家計運用の「預金依存」
第9章 主導権を握れず「外国人依存」が続く金融市場
第10章 日本経済はやっぱり「米国依存」
第11章 ケーススタディ:少子高齢化の秋田県は「日本の未来図」
おわりに

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