2008年3月16日

『ロスチャイルド家と最高のワイン』ヨアヒム・クルツ・著

【ロスチャイルドの栄光】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532352878

本日の一冊は、十九世紀を頂点に華々しい活躍を遂げた名門金融一族、ロスチャイルド家の歴史と社会への影響を追った一冊。

金融業から鉄道業、シャトー、慈善事業まで、一族が行ったさまざまな事業とその軌跡をたどることで、ビジネスの飛躍要因や組織が凋落する原因、ビジネスプロセスで気を配るべきポイントが学べる、じつに読み応えある内容です。

この偉大な一族を生んだ初代ロスチャイルド、マイヤー・アムシェ
ルが少年時代、どんなことについて学び、いかにして有力者の心をつかんでいったか、またその後一族を率いた「金融王」ネイサンがどのようにして巨万の富を得たのか。

必ずしも歴史に興味のない人でも、キャリアやビジネス、投資のヒントがいくつも見つかる、そんな内容です。

また、マネジメントの視点から見ても、初代ロスチャイルドから引
き継がれた戒律は強い組織を作るためのヒントだと思います。

一族の繁栄と凋落の歴史は、経営者に限らず、政治家や一家の長にとっても学ぶところの多い、まさに成功のエッセンスです。

厚い本であり、読むのに骨が折れますが、読者の大局観を養ってく
れる、という点で有用な一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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マイヤー・アムシェルはたちどころに高価できらびやかな物品に関
心をよせ、とりわけ貨幣(古銭)研究にのめりこんだ。彼はこの古
銭研究において幅広い知識を身につけ、やがてこの分野で抜きんで
た専門家となった。そんなとき古銭収集で知られるエストルフ将軍
という人が、この若い古銭マニアの該博な知識にいたく感銘を受け、
以来、幾度となくこの若者に珍しい古銭を調達するよう依頼した

これこそマイヤー・アムシェルが成功した秘密のひとつなのだが、
彼には重要人物に近づきになって、親密な関係を取り結ぶ類いまれ
な才能があった

敵対する陣営を同時に相手にして商取引をおこなうには、きわめて
慎重な立ち回りと峻厳な秘密保持とが要求される。これこそがロス
チャイルド家のお家芸である

彼は遺言状の中で改めて家庭と商売が密接に結びついていることを
強調し、家庭より商売を優先すべきであるとまで述べた

ネイサンは多数の整理公債と、いわゆる担保公債を四十五万ポンド
分買っておいたのだが、この取引値がはね上がった。息をつめてこ
れを見守っていた兄弟たちは、早く売って利益を確保するようネイ
サンに懇願した。だがこの金融王は一年以上も頑固に動かなかった。
はたして彼の目論見は当たり、相場はさらにはね上がった。彼は公
債の一部を十三万ポンドで売り、かなりの儲けを得た

あからさまな反ユダヤ主義やロスチャイルド家を保守主義の手先と
して断罪する風潮が、人々をユダヤ人憎悪へと駆り立てたのであっ
たが、それとならんで大衆がユダヤ人を憎んだ大きな理由は何とい
っても、莫大な富を得た勝利者へのねたみであった

それまで彼らはユダヤ人であるがゆえに、招待パーティや舞踏会と
いった上流階級が催す社交の場から除外されていた。だがこんな屈
辱はもう我慢できないということで、彼らはみずから攻めに転じ、
自分からお客を招待したのである。はたして客人たちはやってきた

装飾品や宝石のように軽いものは持って逃げることができたが、そ
れ以外の財産はとても持ち運べなかった

まだほとんど誰もワインの個性や他との違いにこだわっていなかっ
た時代に、彼はあえて自分の商品にこだわって、ワイン史上はじめ
て独自のブランドを創案した

不況が続く一九三〇年代、カデは時代の好みにぴったり合った大ヒ
ット商品になったのである。その理由は何といっても、有名ブラン
ドの技術と経験で造られた新作ワインが手ごろな値段で楽しめるお
値打ち感にあった

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『ロスチャイルド家と最高のワイン』ヨアヒム・クルツ・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532352878
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◆目次◆

第1部 ロスチャイルド家の発展
1.初代ロスチャイルド、マイヤー・アムシェル
2.五人兄弟、金融帝国を築く
3.権力の絶頂で
4.戦争、危機、破局
5.現代のロスチャイルド家
第2部 ロスチャイルド家と最高のワイン
1.ワイン王国ボルドー
2.シャトー・ムートンとシャトー・ラフィット
3.客人らをもてなすために
4.芳醇なる争い
5.われムートンなり
6.ナチスに届けられた偽ラベル
7.戦後の時代
8.新たな目標に向かって
エピローグ

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