2008年3月11日

『おもてなしの経営学』中島聡・著

【ITビジネスの成否は「おもてなし」で決まる】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4756151345

本日の一冊は、かつてアスキー・ラボラトリーズの一員として数多くのプログラム開発に携わり、マイクロソフト日本法人設立にも参画、現在は人気ブログ「Life is beautiful」の管理人として知られる中島聡さんが、新しい切り口からITビジネス成功の秘訣を語った一冊。

タイトルにある「おもてなし」とは、もともとは、著者の知人から寄せられた「User Experienceは『おもてなし』だと思っています」というコメントからきたコンセプト。

なぜアップルがマイクロソフト、ソニーより熱烈なファンを抱えているのか、なぜ世界トップクラスのエンジニアを抱えるグーグルがYouTubeを約2000億円の高値で買収しなければならなかったのか、その理由が書かれています。

また、自動車業界におけるGMの失敗を例に出して、クラフトマン
シップ不在のIT業界へ警鐘を鳴らしたりもしています。

後半には、西村博之さん、古川享さん、梅田望夫さんと著者の対談
が用意されており、今後のIT業界の経営を考えるヒントがいくつ
も見つかります。

対談のボリュームがかなり多く、もっと著者の分析・洞察を読んで
みたかった気がしますが、全体的には有用な一冊です。

IT業界の動向に興味のある方、モノ作りのヒントを得たい方は、
ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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技術を極めた先にあるもっとも大切な差別化要因が、実は機能の豊
富さや知的財産ではなく「おもてなし」

要素技術も大切なのだが、もう少しトータルに見たユーザー・エク
スペリエンスの向上を考えたものづくりをしない限り、デジタルデ
バイドのギャップは広がるばかりだ

YouTubeもグーグルビデオも、「ユーザーがビデオを共有する」と
いう機能面で見れば本質的に同じサービスである。唯一の違いは、
そのサービスを使う人たちに対する「おもてなし」。グーグルがフ
ォーマット変換などの機能面での充実に力を入れていたのに対し、
YouTubeが力を入れたのは「共有のしやすさ」だ

「マイクロソフトのプロダクツにはソウル(魂)がない」(アップ
ル・ニュートンのチーフアーキテクト、スティーブ・キャップス)

私の知り合いにiPod nanoを持って以来、強烈なアップルファンに
なった人がいるが、彼に言わせると、iPod nanoを持って最初に感
動したのがシリアル番号が金属ケースに彫り込まれていることだっ
たという

IPTV市場が立ち上がるまではまだ数年かかると思ってまちがい
はないが、その意味では、現在の段階でApple TVをビデオレンタル
サービスとの組み合わせで世の中に出し、IPTV市場を立ち上げよう
としているアップルの戦略には注目しておくべきだ

大企業はその膨大な資金・人的リソースを最大限に活用して、小さ
な企業が真似したくても真似できないような大プロジェクトに取り
組むべきだというのが、ビル・ゲイツの言いぶんだ。その結果、マ
イクロソフト内で生じたのは開発と研究の間の大きな溝である

GMが根本的に見過ごしていたのは、工場で働く熟練工のクラフト
マンシップの重要性である

昨今、ウォーターフォール型に対抗したアジャイルな開発スタイル
がエンジニアたちの間でもてはやされるのは、まさにこのクラフト
マンシップを発揮して市場が必要とするものを効率よく作りたいと
いう彼らの叫びである

日本のソフトウェア産業の問題は、中島さんのようにギークとスー
ツの「中間」にいるような人間が非常に少ないこと(梅田望夫)

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『おもてなしの経営学』中島聡・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4756151345
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◆目次◆

はじめに
第1章 おもてなしの経営学
第2章 ITビジネス蘊蓄
第3章 特別対談
PartI 西村博之 ニコニコ動画と2ちゃんねるのビジネス哲学
PartII 古川 享 私たちがマイクロソフトを辞めた本当の理由
PartIII 梅田望夫 「ギーク」「スーツ」の成功方程式
あとがき

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