2008年3月2日

『おひとりさまの老後』上野千鶴子・著

【老後の生き方とビジネスのヒント】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4879546801

本日の一冊は、ベストセラーとなっている『おひとりさまの老後』です。

なぜかビジネス書にカテゴリー分けされているのを見て、不思議に思っていたのですが、読んでみたらその理由がわかりました。

本書は、急激に変化する日本の人口構成と女性のライフスタイルに焦点を当て、そこから生じる悩みや問題、それを解決する方法を、女性学、ジェンダー研究の第一人者、上野千鶴子さんが論じた一冊。

「80歳以上になると、女性の83%に配偶者がいない」という衝撃の事実が冒頭で明かされ、その後、おひとりさまの老後の話につながっていきます。

家族の変化、建物の変化、ライフスタイルの変化と、それに伴って変わった人々の意識。

提示された統計データや実例を眺めていると、「昔は良かった」で
は解決できない現実的な問題があることがよくわかります。

仲睦まじく寄り添って生きた父母を持つ土井としては、主張を異に
する部分もあるのですが、いい悪いは別にして、この著者の見方に
は一理あると思います。

すべてが変わっているのに、変わっていないのはわれわれの意識だけ。

古いロールモデルを引きずっているだけでは乗り越えられない問題
が、ここには存在していると思います。

「ゴキブリのように身を寄せ合って暮らす~」は失言かもしれませ
んが、女性に限らず、自らの老後や生き方を考えたい人には、いい
きっかけとなるはず。

高齢者、単身者向けビジネスのヒントとしても読める一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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65歳以上の高齢者で配偶者がいない女性の割合は、55%と半分以上

これを昔のひとは、「後家楽」とよんだ。うるさい夫を見送って、
後家になりさえすれば、わが世の春。息子をマザコンに仕立てたう
えで、一家の隠然たる権力を握り、今日は温泉、明日は芝居と遊び
あるくのが、日本の女の”上がり”だったのだ

「後家楽」を楽しむための条件は、健康と時間、それに自由になる
おカネと、もうひとつ、自分のための空間だ

高齢化をめぐる変化でいちじるしいものに、子どもとの同居率の低
下がある。65歳以上の高齢者の子どもとの同居率は、1980年には約
70%だったのが、どんどん減少して、2000年には50%弱

統計のうえでひとり世帯の割合が増えているのは、いっぽうで未婚
のひとり世帯、他方で高齢者のひとり世帯が増えているためである

もっともダメージが大きいのは配偶者の喪失

団塊世代の持ち家率は8割を超える

オヤジを看とりさえすれば、夫に先立たれた妻は黙っていても夫名
義の財産の半分は自分のものになるのだ。しかも相続税の基礎控除
額は5000万円プラス法定相続人数×1000万円。つまり、妻と子ども
2人の計3人が相続人なら8000万円までは税金がかからない計算だ

家族は拡大もするが、縮小もする。日本の住宅は拡大期に対応して
いたが、縮小期のことは考えに入れていない

個室を経験した身体は、もとのように雑魚寝文化へは戻れない

「安全がタダ」ではないアメリカでは、ドアマンの数でコンドミニ
アムの値うちが決まる

家族はやがて去る。仕事も仕事仲間もいつかはいなくなる。そのあ
とに残るのは、友人たちである

喪失のつらさを軽減するには、年少の友人をつくるにかぎる

「ありがとう」のことばとともに、担当してくれたひとの人件費込
みで、葬式の費用は用意しておこう

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『おひとりさまの老後』上野千鶴子・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4879546801
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◆目次◆

はじめに
第1章 ようこそ、シングルライフへ
第2章 どこでどう暮らすか
第3章 だれとどうつきあうか
第4章 おカネはどうするか
第5章 どんな介護を受けるか
第6章 どんなふうに「終わる」か

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