2008年3月23日

『「基軸は人」を貫いて』井上礼之・著

【1兆円企業を育てた男】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532313880

本日の一冊は、時価総額重視の経営と人を基軸にした経営を融合し、社長就任以来、13期連続で増益を達成した、ダイキン工業代表取締役会長兼CEO、井上礼之さんによる経営論。

もともと日本経済新聞「私の履歴書」で連載されていたものに、書き下ろし部分を大幅に加え、まとめたもので、1兆円企業を作った著者の生い立ちから思想形成、経営論にいたるまでを、バランスよくまとめています。

尊敬する父に叩き込まれた「なぜ?」を問う精神、いじめを通じて
培った人に対する思いやり、十日間の無断欠勤の後に感じた職場の
人々のあたたかさ…。

なぜ著者に「人を基軸に置いた経営」が可能だったのか、じつによ
くわかるエピソードがつづられています。

また、著者が社長に就任した際、いただいたという数々の言葉も、
経営をする際に大切な心構えを教えてくれます。

全体を通してみた時の読み応えはまあまあといった感じですが、経
営者としての心構えや経営の指針を学ぶという意味では価値があります。

とくに大きな会社のトップに立ちたいと考える方には、大切な教訓
が散りばめられています。ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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父にたたき込まれたのが何に対しても「なぜ?」「なぜ?」と本質
を問いかける精神だ。問いを発しながら周囲を眺めると人間の創造
性や活力をそぐ構造が目に付き、何とか変えてやろうと意欲がわく

(いじめで)一時は夜も眠れないくらい学校に行くのが嫌になった。
弱り果てていたある晩、ふと「あいつは何を望んでいるのだろう」
と思いつき、犬を連れてガキ大将の家を一人で訪ねた。他愛のない
話だったが、一対一で話してみると意外なほどに気弱なやつだ。翌
日から私への態度がころっと変わった

短期で人間を育てるのではなく、長い目で見て「いつかはわかる」
という育て方をしてくれた。父は人が好き。ロマンチストで夢を追
う人で、音楽や自然を愛してやまなかった。私はそんな父の性格や、
物事の本質を見つめながら常に新しいものを追求する精神を少しは
受け継いだようだ。この上なく父を尊敬して生きてこられたのは幸福だ

十日間の無断欠勤のあと職場に復帰すると、普段はあいさつもして
くれない係長が私の顔を見てニタッと笑った。「わがままなことで
申し訳ありません」とわびると、無言でうなずき「この仕事を一週
間でやっといてくれ」と命じた。それまで毛嫌いしていた係長との
距離が一気に縮んだ。課長も「そんなこともあるわな」と平然とし
た態度。職場の人たちの優しさと人の弱さを包み込む寛容さを肌で
感じ、会社の景色が全く違って見えた

タイムカードは性悪説に基づく管理だと思う。人間の良心を信じる
べきだと訴え、タイムカードの廃止を提案した(中略)狙いは的中
した。従業員たちは以前よりも早めに出勤し、製造ラインも早く動
き出すようになった

創業者のモットーは「三切り」。見込みがつけば時機を失さずに「
踏み切り」、将来性があるなら多少の犠牲を惜しまない「割り切り」、
最初の意図に反して不利とわかれば直ちに断念する「思い切り」

私の社長就任が決まったとき、ある会社の先輩社長は「今もし自分
が倒れたら誰、二―三年後なら誰、六年以降なら誰と常に後継者を
用意しておきなさい。毎年変えてもいいから」と助言してくれた

やめる決断こそトップの仕事

大事なことは何のために株主価値(株価)を上げるのか、というこ
とです。株主価値の向上とは株主に報いるためだけではなく、増大
した株主価値を手段として社会に役立つために何をするかという視
点を忘れてはなりません

組織は仕事の体系であると同時に「組織は感情の体系」である

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『「基軸は人」を貫いて』井上礼之・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532313880
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◆目次◆

第I部 私の履歴書
第II部 私の経営論
付録 ダイキン工業の現在

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