2008年2月19日

『文章読本』谷崎潤一郎・著

【先人による文章哲学】
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本日の一冊は、明治から昭和にかけて活躍した文豪、谷崎潤一郎が、文章の心構えやルール、技術について書いた不朽の名著。言語と思想のかかわりや、文章テクニック、感覚を研く方法、文体の選び方まで、じつに幅広い考察がなされています。

ところどころに古今東西の名文が紹介されており、それぞれの文を見ながら文章の要諦を学べるのは、なかなか実践的だと思います。

ただ一方で、事例が古く、古典文になってしまっているので、読者の多くは谷崎潤一郎の文章の流儀とルールを中心に学ぶことになると思います。

ただ、その流儀やルールをだけをとってみても、本書の価値は十分
にあると思います。

文章を書く際、音楽的効果や視覚的効果を盛り込む、文法にとらわ
れないなど、およそこの文豪から飛び出す言葉とは思えない内容ばかり。

作家として表現を磨きたい方やこれから作家を目指す方には、ぜひ
読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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口で話す方は、その場で感動させることを主眼としますが、文章の
方はなるたけその感銘が長く記憶されるように書きます

文章に実用的と藝術的との区別はない

文章体の精神を無視した口語体は、決して名文とは云われない

口語体の大いなる欠点は、表現法の自由に釣られて長たらしくなり、
放漫に陥り易いこと

文章のコツ、即ち人に「分らせる」ように書く秘訣は、言葉や文字
で表現出来ることと出来ないこととの限界を知り、その限界内に止
まることが第一

既に言葉と云うものが不完全なものである以上、われわれは読者の
眼と耳とに訴えるあらゆる要素を利用して、表現の不足を補って差
し支えない

真に「分らせるように」書くためには「記憶させるように」書くことが必要

国語と云うものは国民性と切っても切れない関係にある

文法的に正確なのが、必ずしも名文ではない、だから、文法に囚われるな

感覚を研くのにはどうすればよいかと云うと、出来るだけ多くのも
のを、繰り返して読むことが第一であります。次に実際に自分で作
ってみることが第二であります

自分で習うと、他人の巧い拙いが見えるようになる

◆文章の要素
1.用語、2.調子、3.文体 4.体裁 5.品格 6.含蓄

寿命の短い新語が非常に多いのでありますから、新しがって無闇に
そんな言葉を使うと、その人柄が軽卒に見える

文章道において、最も人に教え難いもの、その人の天性に依るとこ
ろの多いものは、調子であろう

定めしわれわれは、男の書いたものは男の声、女の書いたものは女
の声を聴きながら読む

◆文章の上で礼儀を保つ方法
1.饒舌を慎むこと
2.言葉使いを粗略にせぬこと
3.敬語や尊称を疎かにせぬこと

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『文章読本』谷崎潤一郎・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122025354
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◆目次◆

一.文章とは何か
二.文章の上達法
三.文章の要素
解説 吉行淳之介

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