2007年10月6日

『ウォルマートに呑みこまれる世界』

【】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478000905

本日の一冊は、いまやアメリカ経済のみならず、世界経済に多大な影響を与えている巨大企業、ウォルマートの影響を、気鋭のジャーナリストが暴いた一冊。

ウォルマートに関する記事が数々の賞を受け、ビジネスジャーナリズムにおいて最高の賞と言われる「ジェラルドローブ賞」も受賞したという著者が、満を持して出す、待望の一冊です。

日本におけるセブン-イレブンの影響も目を見張るものがありますが、ウォルマートのそれはセブン-イレブンをはるかに凌いでいます。

つまり、ウォルマートの存在は取引先にとって脅威であり、その要
求は、取引条件、提案ともに呑むしかない、という状況。それを著
者は、関係者へのインタビューを織り交ぜながらリアルに描き出し
ています。

同社の低価格戦略により、無駄なパッケージがなくなったなど、環
境への貢献も見られますが、それにより苦境に立たされたパッケー
ジ業者、廃業に追い込まれた小売業、低賃金を余儀なくされる従業
員など、負の影響もかなり見られるようです。

ウォルマートの影響はあまりに甚大すぎて、ウォルマートの功罪を
論じるだけではなく、「マスであること」が及ぼす影響そのものを
考える必要がありそうです。

一企業が肥大化し、圧倒的な影響力を持つと社会にどのような影響
を及ぼすのか。この問題を考えることは、現在急速に進みつつある
フラット化や格差の問題、雇用の問題などを考えることにつながります。

一つのところに富を集中させると、一体何が起こるのか。よりよい
社会をつくる上でも、参考になる一冊ではないでしょうか。

さすがに気鋭のジャーナリストが書いているだけあって、読み応え
のある内容と、軽快な文章。400ページ近くある本ですが、一気に
読み終えてしまう、刺激的な内容です。

ビジネスパーソンの教養として、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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箱を開け、デオドラントの入った容器を取り出し、そして空箱はゴ
ミ箱へ捨てられていた。ウォルマートは、その箱を無駄だと考えた
(中略)箱のコストは一個あたり約五セント。通常、ウォルマート
はこうして節約されたコストをメーカー側と折半している

ウォルマートはP&Gにとって単に最大の顧客であるだけでなく、
二位から一〇位までの顧客すべてを合わせたのと同じ規模になる

ウォルマートの二〇〇四年の総利益(一〇三億ドル)を全部従業員
(一六〇万人)に還元したとしても、従業員一人あたり六四〇〇ド
ルにしかならない

今日にいたっても、ウォルマートのサプライヤーは、ウォルマート
のために無料ダイヤルの電話番号を用意するか、ウォルマートのバ
イヤーからコレクトコールがかかってくれば否応なく受けざるを得ない

サム・ウォルトンが大事にしていた価値観はいまやその本質が逆転
し、この価値観が時には搾取のみならず違法な行為まで引き起こす
ようになっている

「ウォルマートがやっているのはサプライチェーンの革命なんです。
犠牲者として甘んじるのではなく、いかに効率を高めることができ
るのかを考えなければいけないのです」(コロンビア大学ビジネス
スクール教授 ウィリー・ピーターセン)

ウォルマートがコストを低く抑えることができるのは倹約ばかりが
理由ではない。サプライヤーへの戦略的なコスト転嫁も大きな理由だ

「人は、海外から安いものを輸入して何が悪い、ウォルマートで安
いものを売って何が悪い、と言います。もちろんインフレは抑える
ことができるし、ものを安く買えるのはいいことです。しかし、仕
事がなければ何も買えないんです」(カロライナ・ミルズ社社長 
スティーブ・ドビンズ)

一九九七年から二〇〇四年にかけ、ウォルマートの従業員数が四八
万人増える一方、同時期、米国製造業の雇用数は三一〇万人縮小した

「ディーラーたちに、もうウォルマートではスナッパーの芝刈り機
を販売しないと伝えると、彼らは大喜びでした。失った二割のビジ
ネスもディーラーたちの心をつかんだことで、ほとんど取り返すこ
とができたと思います」(シンプリシティCEO ジム・ウィアー)

過去一〇年で、二九のスーパーマーケットチェーンが連邦破産法に
基づく裁判所の保護を求めている。そのうちなんと二五件は、ウォ
ルマートがその原因となっている

一九八九~九九年の一〇年間に、ウォルマートが進出したカウンテ
ィーの貧困率はウォルマートが進出していないカウンティーよりも
高いことがわかった

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『ウォルマートに呑みこまれる世界』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478000905
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┃▼目次▼
┃ 
┃ 第1章 ウォルマート・イフェクトの脅威
┃ 第2章 サム・ウォルトンが釣り上げた大きな魚
┃ 第3章 父と娘でつくった大ヒット商品
┃ 第4章 ウォルマートの強大な圧力
┃ 第5章 ウォルマートに”NO”と言った男
┃ 第6章 私たちはウォルマートについて、いったい何を知っているのか
┃ 第7章 「いつも低価格」の裏側で何が起きているのか
┃ 第8章 1セントの節約は、1セントの儲け
┃ 第9章 ウォルマートと健全な社会
┃ エピローグ
┃ 監訳者あとがき
┃ 
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