2007年9月19日

『京都花街の経営学』

【】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501762

本日の一冊は、京都生まれ・京都育ちの経営学者が、京都花街のビジネスモデルと、その奥に秘められた経営哲学、サービス精神を明らかにした、注目の一冊です。

つい3カ月ほど前、著者の紹介で土井も初めて京都の花街を訪れましたが、そこでいくつか疑問を持ちました。

なぜ、キャッシュフローが悪化するのに、掛け売りをするのか?
なぜ、新規客が入りにくいのに「一見さんお断り」を頑なに守るのか?
お茶屋さんは料理屋なのか? 宴会場なのか?

もともとは作法や常識を学びたくて手に取った本ですが、そこには
意外や意外、会員制ビジネスやサービスのヒントがたっぷりと詰ま
っていました。

特に信用情報を得るためにあえてキャッシュフローを捨てる、とい
う考えは、今日では斬新であり、じつに参考になりました。

また、お茶屋さんがなぜ芸舞妓さんを抱え込まないのか、飲食店で
はないのか、という点も、サービスという点から合点がいきました。

秘密厳守の世界だけに、情報が完全ではなく、若干食い足りない部
分もありますが、それでも興味深く読むことができます。

350年続く究極のサービス業。その真髄を知りたい方は、ぜひ読んで
みてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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現在京都には、上七軒、祇園甲部、祇園東、先斗町、宮川町、島原
の計六カ所の花街がある(現在も栄えているのは島原以外の五花街)

花街の公休日は月二日、年末年始のお休みなども勘案して、芸舞妓
さんたちは年間で三〇〇日程度はお座敷にでられ、稼働率を八〇%
程度とすると、芸舞妓さん一人あたりの年間総花代は、一二万円×
三〇〇日×〇.八=二八八〇万円という計算になる。京都花街の芸
舞妓さんの人数は二七三人(二〇〇七年二月二八日現在)なので、
二八八〇万円×二七三人=七八億六二四〇万円という総花代が推計
できる

お茶屋の「お母さん」と呼ばれる経営者は、お客の好みや利用の目
的にあわせて、芸舞妓さんや料理などを手配し、お座敷のしつらえ
を組み立てる。まるでイベントのコーディネーター兼プロデューサ
ーのような役割を担っているのだ

置屋は日本全国で通じる一般的な呼称であるが、京都花街では置屋
のことを屋形あるいは子方屋と呼ぶことが多い。この花街ならでは
のお店は、若い女性に芸事やしきたりを教え、着物を用意して、舞
妓さんや芸妓さんとしてお茶屋へ送り出す、いわば芸能プロダクシ
ョンのようなところである

◆「一見さんお断り」が生まれた背景
1.長期掛け払いの取引慣行→債務不履行の防止
2.もてなしというサービス→顧客の情報にもとづくサービスの提供
3.職住一体の女所帯→生活者と顧客の安全性への配慮

お茶屋で遊べること自体に、その人が信用できる、ちゃんとした一
人前の大人であることを証明するという機能をもたせることに成功
している

顧客のニーズをかなえるためであれば、自分の売上が減る、あるい
はもしかしたら顧客がよそのお茶屋にかわってしまう可能性がある
場合でも、お茶屋側は顧客の希望を優先することがある

お茶屋のお母さんは、お客のお座敷での様子から芸舞妓さんや料理
の好みなど提供するコンテンツに関する情報を読みとるだけでなく、
支払いという物理的な状況からお客の懐具合を察知し、さらに、長
期掛け払いによって、お客の本音をさりげなくかつきちんと継続的
に聞きだすことができている

在庫はもたず、提供するコンテンツとして適切なものを外注するこ
とに特化した業態が、京都のお茶屋

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『京都花街の経営学』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501762
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┃▼目次▼
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┃ 第1章 京都花街とは??業界の特徴と規模
┃ 第2章 芸舞妓さんとお茶屋と置屋~高度技能専門職の女性たち
┃ 第3章 一見さんお断り~350年続く会員制ビジネス
┃ 第4章 舞妓さんの一生~徹底したOJTによるキャリア形成
┃ 第5章 お財布はいりまへん~分業制度と取引システム
┃ 第6章 花街の評価システム~成果主義と360度評価
┃ 第7章 女紅場~働きながら学ぶしくみ
┃ 第8章 京都花街の経営学~超長期競争優位性の事業システム
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