2006年10月31日

『企業内人材育成入門』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478440557

本日の一冊は、「人材育成部門の書棚に常備される教科書」を目指
して作られた、企業研修に携わる人のためのテキストです。

特定の人向けに作られた本で、かつタイトルもシンプル極まりない
ものですが、内容はじつに充実しています。

古今東西の研究者による、人間心理や教育に関する研究成果が過不
足なく盛り込まれており、当該分野の理論を学ぶには重宝する一冊
ではないでしょうか。

トピックだけをひろっても、学習のメカニズムや動機づけ理論、学
習環境のデザイン、教育・研修の評価など、魅力的なものがズラリ
と並んでいます。

本書が特徴的なのは、ありそうでなかなかない、社会人のための教
育・学習の理論を扱っているということ。

オトナのための教育学「アンドラゴジー」や、人間が熟達するため
の認知的徒弟制のステップ、内発的動機づけの理論などは、学んで
おいて損はないと思います。

著者が冒頭で述べているように、「<私>にとってうまくいった教
育方法でも、<彼>にとってうまくいくわけではない。<私>にと
っての「教師」は、<彼>にとってもよい教師であるわけではない」

この機会に、「人を育てる科学」について学びたいと思った方は、
ぜひ読んでみてください。

とくに、人事や教育ビジネスの関係者、経営幹部は必読の一冊です。

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■ 本日の赤ペンチェック
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競争優位性に直結した知的生産性向上を達成することではじめて、
ビジネスパーソンは学んだと認められることになる

反応が正しかったのか間違っていたのかに関する情報は、すぐに与
えられなければならない。これを「即時フィードバックの原理」とよぶ

全体像を学習者があらかじめ把握していれば、その後に続く内容は、
より意味のあるものとして記憶される可能性が高くなる

◆大人の学習者の特徴
実利的、動機を必要とする、自律的、関係性を必要とする、目的志
向性が高い、豊富な人生経験がある

人間の根元的な認識には、「論理―科学的様式(パラディグマティ
ックモード)」と「物語様式(ナラティヴモード)」という二つの
思考様式が存在する

◆認知的徒弟制のステップ
1.モデリング 2.コーチング 3.スキャフォルディング
4.フェイディング

一般に、仕事や学習などの高次の活動には、外発的動機づけより内
発的動機づけのほうが効果的であるといわれる。その理由の一つは、
外発的動機づけでは、その動機づけが与えられない状況になったと
き、活動への意欲が低下する可能性があるからである

内発的動機づけは、報酬のような外発的動機づけを与えることでか
えって下がってしまう場合もある

学習の結果をもたらす原因が、外部にではなく自分の内部にあると
考える(内的)ほうが、学習者の意欲は高まる。また、その原因は
変えられないものではなく(安定)、容易に変えられる(不安定)
と考えているほうが、さらに学習者の意欲は高まる

能力は努力次第で変えられるという考え(能力変化観)をもつ人は、
能力は固定的でコントロールできないものだという考え(能力固定
観)をもつ人に比べ、内発的に動機づけられやすい

人は自分について深く振り返り、職業上の自己イメージをもつこと
によって、自分のアンカーに気づくことができる

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『企業内人材育成入門』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478440557
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■目次■

序章 「企業は人なり」とは言うけれど
第1章 学習のメカニズム
第2章 学習モデル
第3章 動機づけの理論
第4章 インストラクショナルデザイン
第5章 学習環境のデザイン
第6章 教育・研修の評価
第7章 キャリア開発の考え方
第8章 企業教育の政治力学
終章 人材育成の明日

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