2006年9月11日

『加賀屋の流儀』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569654541

本日の一冊は、「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で、26年間
総合1位を獲得している「加賀屋」の秘密にジャーナリストが迫っ
た一冊。

意外なことに、加賀屋をテーマにした本はこれまでほとんど見られ
ず、本格的に紹介した本は、これが初めてではないかと思われます。

内容は、普段、歴史文化や産業の分野を専門としている著者が書い
たということで、ビジネス的にはちょっと視点が物足りない感があ
りますが、何しろ相手は伝説の旅館。

加賀屋の経営陣や客室係、料理長、宿泊客の声を拾っただけでも、
貴重な資料と言えるかもしれません。

これらの資料を丁寧に見ていくと、そこからは、タイトルにもある
「加賀屋の流儀」が見えてきます。

「ありません」「できません」とは絶対に言わない伝統、宿泊客の
さり気ない仕草からも心の機微を感じ取る客室係の感性、たとえ団
体客でもひとりひとりの趣味嗜好に配慮した料理を出す調理場…。

ひとつひとつのエピソードから、「日本一」を背負った加賀屋の精
神と努力が伝わってくる、そんな内容です。

サービス業に携わる方は、ぜひ読んでみてください。

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■ 本日の赤ペンチェック
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観光には”三物”がある(中略)”三物”とは、風物と産物と人物である

この宿には「ありません」「できません」とは絶対に言わない伝統がある

「自分は加賀屋という組織の中だから力を発揮できる立場であり、
背後に何百人というスタッフがいるから、客室係の花代として働け
るんです。もし、固い食べ物が苦手なお客様がお見えになって、お
食事の間際に『やわらかいご飯を食べたい』と急におっしゃられて
も、調理場に注文すると一時間後にはちゃんとやわらかいご飯をた
った一人の方のために炊き上げてくれる。これだけの大型旅館であ
りながら、この繊細さはいつもすごいと感じています」(客室係・花代さん)

客室係を頂点に、流れるような宿全体のコンビネーションが確立さ
れているところにこそ、日本一を続ける加賀屋の秘密の一つがある

銘柄を指定せずに、味の好みを伝えるだけで、お酒を飲む人たちの
嗜好に合った日本酒が出てくるのも、加賀屋の本領の一つ

「毎日、顔も心も違うお客様と向き合うのに、形を定めたマニュア
ルはほとんど役に立ちません。私たちはお客様が玄関にお入りにな
った瞬間から、片時もお客様から目をそらさず、お一人お一人の行
動や言葉に神経を注いで、この方に何をして差し上げたら喜んでい
ただけるのか、そのことばかりを考えています」(岩間慶子さん)

気持ちの先回りを、いつ、どなたにも、さりげなくして差し上げる
ところに、加賀屋のもてなしの極意がある

加賀屋の従業員は客室係を含め、社長や女将さんから指図や指示を
受けて動くことを恥だと考えていました

加賀屋の人身掌握は恐るべしである。会長、社長が「今日は君の誕
生日だったね」と、仕事に夢中の社員に声をかけるのは、なんでも
ない日常の光景であり、顔色がすぐれないと感じれば、女将からそ
っと漢方薬が届いたりする

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『加賀屋の流儀』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569654541
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■目次■

第1章 人生が出会う宿
第2章 接客十戒
第3章 もてなしの宿の女性軍団
第4章 一客入魂の脇役
第5章 ホテルは足し算・旅館は引き算
第6章 加賀屋の暖簾と人々の人生を背に

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