2006年9月5日

『アメリカと比べない日本』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903241173

本日の一冊は、元マッキンゼーのディレクターで、現在は「社会シ
ステム・デザイン」の発展に取り組んでいるという著者が、これか
らの日本のあり方とそこで求められる「社会システム・デザイン」
という考え方について解説した一冊です。

本書によると、今後日本に求められるあり方は、「課題解決先進国
になる」ということ。

著者によると、少子化はこれまでに他の先進国が直面してきた問題
で、前例があるのですが、高齢化というのは、日本が先進国のなか
でも最初に取り組む問題。

それゆえに、日本には、この問題を自力解決する力が必要、という
のが本書の主張です。

戦後、日本経済がどのような経緯をたどって現在にいたったか、と
いう点や、他の先進国と比べた場合の問題点など、広範なトピック
を扱っているため、若干論点がばらついている印象はありますが、
一般のメディアではなかなか述べられない事実が述べられており、
興味深い内容ではあります。

ページ数が少ないせいか、結論を急いだ感があるのが残念ですが、
今後の日本のあり方を問う、という役割は果たせていると思います。

ビジネス書だけを読んでいては得られない、広い視野が得られる一冊です。

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■ 本日の赤ペンチェック
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グローバリゼーションの時代に日本は内向きであることを弱みとし
て指摘されるが、逆説的に言えば、国内に世界の「先進課題」があ
るのだから内向きは結構なのである

「世界第2の経済大国」という看板も、中国の台頭で風前の灯とな
ってきたようだ。中国元の切り上げがあれば日本は世界第3位に落
ちるだろうし、あるいは、購買力平価で計算すればすでにそうなっている

第2次世界大戦後の日本社会を支えてきた「社会システム」は、デ
ザインし直しの時期を迎えている

すでに製造業の就業人口比率が19%になってしまい、ほとんどがサ
ービス業に従事していることを考えると、今後もこのような企業城
下町と同じような職場と町が出現することはないだろう

アメリカはみんなが思う以上に世界でも特殊な国

日本は研究者の数が多い国である。65万人いるが、これはアメリカ
の半分、韓国の4倍以上であり、イギリス、フランス、ドイツの3
カ国を足した数より多い

世界で人口が1億円を超えている先進国はアメリカ以外に日本しかない

日本の大衆文化で世界に伝播したのは、ほとんど言語非依存型

一昔前までは、東京大学に行くのは貧しい家庭の子どもというのが
世間の相場であった(中略)ところが、今や経済的に裕福な家庭の
子どもでなければ、東大に入学するのは難しいと言われている。小
学校からの塾通いや特別学習、家庭教師など、注ぎ込むべきお金は
半端な額ではない(中略)日本でも家庭の経済力を尺度とするエリ
ート層の形成と固定化が進行している

今、日本に必要なことは「自己確認」という「日本のアイデンティ
ティ」を問うことであり、新たなアスピレーションを持つことであ
るに違いない。そのためには、外国人が日本人をどう見ているのか、
あるいは見ていないのかを知ることも必要だ

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『アメリカと比べない日本』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903241173
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■目次■

第1章 日本および日本人のマインド・セットはいかにして出来上がったのか
第2章 ファクトを押さえる
第3章 日本の実力を棚卸しする
第4章 覇権主義国が抱える問題点
第5章 アイデンティティに基づく取るべき方向
第6章 社会システム・デザイン

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