2006年2月10日

『「みんなの意見」は案外正しい』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047915068
本日の一冊は、「ニューヨーカー」金融ページの人気ビジネスコラムニスト、ジェームズ・スロウィッキーによる注目の論考です。

古代ギリシャの民主制がデマゴーグ(衆愚)に陥り、失敗したことや、株式投資における失敗がしばしば「群集心理」によりもたらされることなど、われわれの認識のなかにある集団の知は、決して優れたものではありません。

しかし、著者が説くのは、「集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中でいちばん優秀な個人の知力よりも優れている」という仮説。

もちろんこれには条件があるのですが、それは本書を読んでのお楽しみ。

間違いなく言えるのは、本書には、これを証明するような、驚きの実験結果、事例が数多く登場するということ。

雄牛の重量当てコンテストや、有名な「ビンの中のジェリービーンズ」を使った実験など、数多くの事例から、集団が優秀な個人より優れている理由が明らかになってきます。

本書が扱っているのは、確率の問題であり、人間心理の問題であり、またマネジメントの問題でもあります。

なぜわれわれ人間は集まり、それぞれの英知を結集するべきなのか。本書には、まさにその答えが書かれています。

「衆知を集める」ことをモットーとした松下幸之助が生きていたら、きっと「我が意を得たり」といって微笑む、そんな一冊だと思います。
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■ 本日の赤ペンチェック
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正しい状況下では、集団はきわめて優れた知力を発揮するし、それは往々にして集団の中でいちばん優秀な個人の知力よりも優れている

専門家を追いかける代わりに、集団に答えを求めるべきなのだ(中略)集団は答えを知っているのだから

「一般的な利益に関わる意思決定を下す」ように要請すると、集団や群衆が到達する結論は、「一人の個人よりつねに知的に優る」

◆ビンの中のジェリービーンズの数を当てる実験
この実験を行うと、必ず集団の推測のほうが圧倒的多数の個人よりも正確だという結果が出る

◆賢い集団の4つの要件
1.意見の多様性
2.独立性
3.分散性
4.集約性

個人の回答には情報と間違いという二つの要素がある。算数のようなもので、間違いを引き算したら情報が残るというわけだ

それほどよく物事を知らなくても、違うスキルを持った人が数人加わることで、集団全体のパフォーマンスは向上する

集団のメンバーがお互いに大きな影響を与え、お互いの個人的関わりが強くなると、集団の判断は賢明でなくなる

優秀なCEOはもちろん自身の知識や意思決定能力の限界に気づいている

民主主義の下に生まれたみんなの意見に集団の知恵が現れないこともある。けれど、民主的にみんなの意見を聞くということに集団の知恵が現れているのである
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『「みんなの意見」は案外正しい』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047915068
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■目次■
はじめに
第1章 集団の知恵
第2章 違いから生まれる違い 8の字ダンス、ピッグズ湾事件、多様性
第3章 ひと真似は近道 模倣、情報の流れ、独立性
第4章 ばらばらのカケラを一つに集める CIA、リナックス、分散性
第5章 シャル・ウィ・ダンス? 複雑な世の中でコーディネーションをする
第6章 社会は確かに存在している 税金、チップ、テレビ、信頼
第7章 渋滞 調整が失敗したとき
第8章 科学 協力、競争、名声
第9章 委員会、陪審、チーム
    コロンビア号の惨事と小さなチームの動かし方
第10章 企業 新しいボスって、どうよ?
第11章 市場 美人投票、ボウリング場、株価
第12章 民主主義 公益という夢
訳者あとがき
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