2005年11月5日

『自動車と私 カール・ベンツ自伝』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794214456

本日の一冊は、自動車の父、カール・ベンツが1925年に著した唯一の自伝で、今回初めて邦訳されたものです。

鍛冶職人の家系に生まれ、幼くして父を亡くしたベンツの、幼少期から結婚、自動車の発明にいたるまでの激動の人生がコンパクトにまとめられています。

革新的なことを成し遂げた人物には必ずつきまとうことですが、ベンツもまた、抵抗勢力からの圧力や、誹謗・中傷に耐えなくてはいけませんでした。

発明の段階で去っていった知人、開発中に冷ややかな批判を浴びせた新聞、実用化された際に反対した当局など、じつにさまざまな障害があったようですが、ベンツはこれらをものともせず、自分の理念を貫き通しました。

読者は、ベンツの問題解決に臨む姿勢や、困難に遭遇した際の考え方から、多くを学ぶに違いありません。

自動車の歴史に興味のある方はもちろん、信念をもって大事を成し遂げようとする方には、ぜひ読んでいただきたい、そんな一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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亡くなった父が私に遺産として残したのは、「人間は高貴にして、人助けを惜しまず、善良であれ」[ゲーテの詩「神性」の冒頭の二行]という倫理的な手本だけで、ほかにはほとんど何もなかった。かくして私は二歳で父無し子となった

母は、ささやかな財産も含め、すべてを犠牲にして、息子によい教育を受けさせ、教養を身につけさせようとした

ひたすら科学への道を歩もうとする息子の予算要求に、母は好意的な理解と気高い犠牲心をもって応じてくれたのである

「学校は現実世界の必要性という引き綱で引っ張られるのではなく、可能なかぎり現実世界の必要性に先んじているべきである」
(グラスホーフ先生の言葉)

「手仕事や職人技にもっと敬意を」、これは私がつねに心に銘記している言葉である

技術という鉄床の上で何か偉大なことが実現されたときは、いつでもハンマーを力いっぱい振り下ろすことが必要であった。さまざまな抵抗を叩き潰し、時代の見解なるものを打ち破らなければならなかったのだ。そのようにして初めて、資金の不足や関係者の抵抗を退けて、不屈の創造力をもった新しい形式が育つのである

ベンツやダイムラーやツェッペリン伯のような人々が、最初はどれほどの偏見や嘲笑、仮借ない敵意と戦わなければならなかったことか。世論や資本によって支えられることがどれほど少なかったことか。国もまたいかに長年にわたって不信と躊躇から傍観をつづけ、これらの開発をもっぱら個人の行動力と偶然にゆだねていたことだろうか

生きているとはまさにこういうことなのだ!
高く登るにつれて、まわりは静かに、寂しく、寒くなっていく。いっしょに稜線をめざした仲間のうち、何人かは子供時代や青春時代という花咲く斜面を歩いただけで、そこから先には進まなかった。道が険しくなり岸壁をよじ登るようになると、仲間はごくわずかになってしまった

愛と思い出があらゆる鐘とともに鳴り響こうとも、私にはあまりにもよくわかっている――それが夕べの鐘であることが。その一方で、やがてその響きが遠のき消えていくにしても――私は一つの熱い思いを感じている。発明への愛は止むことがないという思いである
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『自動車と私 カール・ベンツ自伝』
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