2005年11月11日

『スティーブ・ジョブズ偶像復活』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501479

本日の一冊は、発売開始直後から話題となっている、スティーブ・ジョブズの評伝です。

「カリスマ」と呼ばれる著者の実態を暴き、アメリカでは発禁騒動にまで発展したという、超問題作です。

ご存知の通り、スティーブ・ジョブズは、アップルの共同創立者であり、いったんは追放されながらも返り咲いて、iPodで大成功を収めました。

本書には、そのジョブズの生い立ちから、学生時代、そしてアップルにおけるさまざまな出来事がつづられています。

容姿端麗で、他人を鼓舞する能力に長けた超カリスマリーダー。しかし、その実態は、世間で言われているほど、きれいなものでもなかったようです。

本書には、日本でも、一部の事情通しか知らなかった開発の現場とアップル社内の泥まみれの政治、メンバー間の確執が描かれています。

まさに、オビの謳い文句通り、「カリスマの虚像と実像を追った」優れたノンフィクションです。

ちなみに著者は、「フォーブス」「マックワールド」などの編集をしていたジェフリー・ヤングと、ケビン・ミトニックとの共著で話題となった『欺術』の著者、ウィリアム・サイモン。

経営者やビジネスパーソンはもちろん、ITエンジニアにとっても見逃せない、注目の一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアクは、いわゆる類友だった。ふたりとも孤独を好み、自己陶酔型で、他人と接点を持たず、交友範囲は狭く、運動も苦手だった

1976年の後半、アップルIIの発売と会社の発展に向けて奮闘していたころ、スティーブ・ジョブズは自分に限界があることを認めるとともに、すぐれた人材を発掘し、おだてて協力させる並はずれた手腕を発揮しはじめた。彼には、セールスマンが製品に対して持つ愛着と伝道者のような情熱、目的に向かって突きすすむ狂信的な性分、事業を成功させるというハングリー精神があった。これがアップルを成功に導いた源泉でもあり、同時に、多くの人を敵に回すことになる原因でもあった

単なる大金持ちではない。最年少の大金持ちだった。普通の人から見たスティーブは、偶像だった。勝利の微笑みをうかべたハンサムな独身の若者。人々の生活を一変させ、新世界を生みだす新技術の開拓者。粗野なところもあったが、それも遠からず洗練されるだろう。そういうところがかえって魅力的でもあった

「スティーブは、水平線のかなた、数千マイルも向こうを見ることができます」とジェイ・エリオットは指摘する。「でも、そこにいたるまでの道がどうなっているかは見えないのです。これがスティーブの才能であり、失脚の原因です」

コンピューターアニメーションに注目したスティーブは、大切なのはハードウェアでもソフトウェアでもないことに気づく。大切なのは、ユーザーや観客がどのような体験をするのか――「コンテンツ」だったのだ(中略)スティーブは、ピクサー社で、再び社会現象を引きおこす。そして、その過程で、後にアップルを再生し、自分の評価を確立しなおす原動力となる秘密を発見する

自分の考えに固執する人物は、過去という牢獄にとらわれた囚人である。この牢獄からスティーブは抜け出そうとしていた

スティーブは言う。「iPodがあれば、音楽の楽しみが一変するんだ」。この言葉は、スティーブ・ジョブズ本人が想像もしなかったほど真実を言いあてていた

スティーブ・ジョブズは、50歳という年齢で、3つの業界の偶像となった
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『スティーブ・ジョブズ偶像復活』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501479
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■目次■
日本語版の読者へ ジェフリー・S・ヤング
プロローグ
<第1部 沙羅双樹の花の色>
第1章 ルーツ
第2章 ある企業の誕生
第3章 海賊になろう!
第4章 敗北を学ぶ

<第2部 一から出直す>
第5章 NeXTステップ
第6章 ショービジネス
第7章 セレモニーの達人
第8章 偶像

<第3部 未来を編む>
第9章 大立て者
第10章 新境地を開拓する
第11章 iPod、iTunes、故に我あり
第12章 巨人の衝突
第13章 ショータイム
エピローグ
謝辞
訳者あとがき
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