2005年6月10日

『幻想曲』

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本日の一冊は、気鋭のジャーナリストが、綿密な取材をもとに、孫正義の半生を描き出した、注目の新刊です。

「日経ビジネス」で話題となった連載をまとめて単行本化したものですが、じつに読み応えがあります。

久々に力を込めて言いましょう。この本は「買い」です!

不遇な少年時代を過ごした孫正義が、いかにして自己を高め、魑魅魍魎がはびこるビジネスの世界で成り上がっていったのか。その奇跡が、じつに詳細に描かれています。

地道な努力の積み重ねで学問を習得し、シャープの佐々木をはじめとする支援者を得ていく過程、本格的にビジネスを始めてからのパートナーたちとの軋轢、そして稲盛和夫や西和彦といったカリスマ経営者たちとの丁々発止のやりとり…。

経営者たちの心情やコンプレックス、プライドのぶつかり合いが、ビジネス上のやり取りのなかから伝わってくる、そんな内容です。

巷にあふれるビジネス書ではとても味わえない、緊迫感と臨場感にあふれた、優れたノンフィクションに仕上がっています。

孫正義ファン、ソフトバンク関係者でなくとも読んでおきたい、ビジネスパーソン必読の一冊です。
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■ 本日の赤ペンチェック
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ベニヤ板とトタン屋根のバラック小屋の周りに豚の鳴き声が絶えず、悪臭に包まれるような劣悪な環境の中、三憲夫婦が授かった正義は、まさに一族の希望だった

安本(孫正義)は目の涼しい子で、勉強もできたが、本当にみんなとよく遊んでいた。集中力、みなを説得する力、リーダー性はどれも抜群だった

なぜ唐突に孫は友人の母親を訪ねたのか? 三木の母親が塾の保護者会の委員をする有力者であり、館長の森田譲康と懇意にしていたからである。後年、彼が戦略的なキーパーソンを探し出してはそれに直接アプローチしては口説き落とすビジネススタイルの原型がここに見られる

孫はこの地で後年彼が”タイムマシーン経営”と名づけた経営理念の原点も見つけ出す。すなわち、日米間の経済ギャップとタイムラグを利用すれば他人より一歩先んじることができるという思いだ

孫のビジネスが大きく変化する時、そこには必ず孫自らが狙いをつけ、口説き落としたパートナーの存在がある。そして、そのビジネスが軌道に乗り、次のビジネスに向かう時、孫は新たなパートナーを求める

忘れてはならないのは、流通企業の経営者である堤には「コンピュータと流通」を説き、経済通といわれる政治家には「コンピュータ産業と日本経済」を取り上げるなど、相手によって話題を変え、相手の気を逸らさずに自分を売り込むプレゼンテーション能力の高さ

流通分野を押さえにかかった孫に対して反発したのは西だった。流通への進出を目論んでいた西にすれば会社を設立してわずか数ヵ月の孫にそれを押さえられてしまったのである。第一人者を任じる西のプライドはそれを許さなかった。かくして、二人の確執は様々な人を巻き込んで始まっていくのである

一度はプライドを全否定され、そして上場していないが故に買収話を理不尽に白紙に戻された孫にとって、興銀は不倶戴天の敵にも似た存在へとなっていく

「ここからの帰りにシリコンバレーに寄るからアポを取っといてくれ」孫の決断は早かった(中略)孫はその場で五%の出資を決めたばかりか、出資比率ソフトバンク六〇%の日本法人設立の確約も取りつけてしまった。ヤフー側の四〇%分の資金もソフトバンクが貸与するという条件である
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『幻想曲』
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■目次■
プロローグ
第1章 1957年~1981年
第2章 1981年~1985年
第3章 1985年~1994年
第4章 1994年~2000年
第5章 2000年~2001年
第6章 2001年~
エピローグ
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