2005年5月8日

『ジョイ・オブ・ワーク』

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本日の一冊は、デミング博士の弟子であり、現在、青山大学大学院の教授をつとめる吉田耕作さんが、自らが編み出したマネジメントおよび仕事の方法論を紹介した一冊です。

多くの本で成果主義の問題点が指摘されていますが、本書で著者は、成果主義がうまくいかない理由を統計学的に説明しています。

つまり、仕事全体のクオリティを高めるためには、ばらつきがあってはいけない。成果主義のもとではばらつきが大きくなって、全体のクオリティが下がるというのです。

また、デミング博士の「ビーズの実験」の例を取り、サラリーマンの成果の約8割は、その個人の属しているシステムに決定されており、本人にはコントロール不可能である、とも指摘しています。

つまり、企業にとって大切なのは、「質」を生み出すためのばらつきの管理であり、経営者に求められるのは、安心して働ける環境作りだというのです。

そこで、著者が提唱するのが、CDGM(Creative Dynamic Group Method)と呼ばれる概念。簡単に言えば、人々を協調させることによってグループ全体の生産性および組織全体の競争力を高めようというものです。

本書では、このCDGMについて、概念から具体的な実践方法、実際の企業の実践例までが示されています。QCに対しては、悪いイメージを持っている人もいるでしょうが、成果主義が崩壊しつつある今、この考え方自体は注目すべきものと思われます。

また、コラム的に扱われてはいますが、個人的には、セブン-イレブンが選択と集中で業績を改善した話や、内因性モチベーションを外因性モチベーションにすりかえ、子供に悪口をやめさせた用務員のおじさんの話などが載っている、「吉田語録」が参考になりました。

値段や装丁、タイトルなどのせいでちょっと手に取るのをためらってしまいそうな本ですが、オペレーションの担当者や人事、トップマネジメントは必読です。経営者として、個人的にもいい勉強になりました。
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■ 本日のワンポイント赤ペンチェック
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品質管理でいう品質向上とは、ばらつきを減らし平均値を改善することを意味する

競争は一般にばらつきを広げ、協調は一般にばらつきを狭くする

デミング経営哲学の2本の柱は、従業員の心理の理解と、個々の人間及び部門が全組織とどう関わっていくべきかという理解であり、特にトップマネジメントの責任が強調される

人間としての最も基本的な2つの欲求――生理的欲求と安全欲求――を満たす主たる責任は、トップマネジメントにある

下部の4つの欲求が満たされていない限り、いくら経営者が従業員に質の良い仕事を求めても徒労に終わる

成果の約8割は、その個人の属しているシステムにより決定される

重要なのは従業員の手足だけではなく、彼らの頭脳であり感情である

長続きのする小集団活動は主として外因性モチベーションではなく、内因性モチベーションにもとづいた意欲付けが必要

◆デミング14ポイント ※一部抜粋
1.競争力をつけ、生存し続け、そして従業員に職を与え続けるために、製品やサービスをつねに向上させる一貫した不動の目的を打ち立てること
3.品質を達成するために、検査に頼るのをやめること。最初の段階で質を製品に織り込むことにより、大量の検査に頼る必要性を排除すること
4.価格だけで仕入れを決定する習慣をやめ、その代わり、総コストを最低にすること。それぞれの仕入れ項目については、忠誠と信頼の長期関係にもとづき、仕入先を1社にする方向にもっていくこと
8.全員が会社のために効果的に働けるように恐怖心を取り除くこと
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『ジョイ・オブ・ワーク』
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■目次■
はじめに
第1章 なぜ日米の競争力は逆転したのか?
第2章 新しいTQMのコンセプト
第3章 どうしたら改善できるのか?
第4章 ばらつきを管理しよう―管理図
第5章 Creative Dynamic Group Method―創造力を最大限に発揮させるグループ
第6章 日本のQCサークルはなぜ衰退したのか?
第7章 社会福祉局だって、改善できる
第8章 CDGMの実践1―元気のいい中小企業の話
第9章 CDGMの実践2―成熟した会社だって、改善できる!
第10章 デミング経営哲学の真髄―デミング14ポイント
第11章 文科系の学生に競争力を
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