2005年1月13日

『君たちはどう生きるか』

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本日の一冊は、古典的名著として名高い、吉野源三郎さんの『君たちはどう生きるか』です。

中学二年生の主人公、コペル君こと本田潤一の精神的成長をストーリーで語りながら、われわれの社会がどのようになっているのか、そしてそこでわれわれはいかに生きるべきか、といったことを説いた本です。

コペルニクスやニュートンの発想法、ナポレオンの毅然とした生き方、ギリシャからガンダーラを通じて日本に伝わった仏像の歴史などから、コペル君が学んでいくさまざまなことは、社会人としてすでに活動している私たちにも、忘れかけていた大切なことを教えてくれます。

社会のなかで生きるための基本的認識や心構え、というものを再度与えてくれる、そんな一冊です。

引用が極めて難しい本ですので、コペル君と叔父さんのやり取りのなかから、いくつか教訓を抜き出してみましょう。
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■ 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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君は、コペルニクスの地動説を知っているね。コペルニクスがそれを唱えるまで、昔の人は、みんな、太陽や星が地球のまわりをまわっていると、目で見たままに信じていた。これは、一つは、キリスト教の教会の教えで、地球が宇宙の中心だと信じていたせいもある。しかし、もう一歩突きいって考えると、人間というものが、いつでも、自分を中心として、ものを見たり考えたりするという性質をもっているためなんだ。

まず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない。そうして、どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えて見るのだ。そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰りかえすことのない、ただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかって来る。それが、本当の君の思想というものだ。

肝心なことは、世間の眼よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。そうして、心底から、立派な人間になりたいという気持を起こすことだ。

ニュートンが偉かったのは、ただ、重力と引力が同じものじゃないかと、考えついたというだけじゃあない。その思いつきからはじまって、非常な苦心と努力とによって、実際にそれを確かめたというところにあるんだ。これが、普通の人にはとても出来ないようなむずかしい問題だったのだね。

骨を折る以上は、人類が今日まで進歩して来て、まだ解くことが出来ないでいる問題のために、骨を折らなくてはうそだ。(中略)偉大な発見がしたかったら、いまの君は、何よりもまず、もりもり勉強して、今日の学問の頂上にのぼり切ってしまう必要がある。そして、その頂上で仕事をするんだ。

自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か――

――君も大人になってゆくと、よい心がけをもっていながら、弱いばかりにその心がけを生かし切れないでいる、小さな善人がどんなに多いかということを、おいおいに知って来るだろう。世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。君も、いまに、きっと思いあたることがあるだろう。
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土井は初めて読んだのですが、社会人になってから読むと、また違う味わいがある、というのが一般的な評価です。ぜひ読んでみて、良かったらお子さんにも読ませてあげてください。

というわけで、本日の一冊は、

『君たちはどう生きるか』
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です。また一冊、良い本に出会えました。ありがとうございます。

■目次■
1 へんな経験
2 勇ましき友
3 ニュートンの林檎と粉ミルク
4 貧しき友
5 ナポレオンと四人の少年
6 雪の日の出来事
7 石段の思い出
8 凱旋
9 水仙の芽とガンダーラの仏像
10 春の朝
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