2004年12月15日

『日本経済新聞は信用できるか』

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本日の一冊は、話題となった『エコノミストは信用できるか』の著者、東谷暁さんによる注目の最新刊です。

参考:『エコノミストは信用できるか』
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今回は、なんと日本を代表する経済紙、日本経済新聞の報道内容をトピックごとに時系列で追い、その論調を徹底検証する、という刺激的な内容になっています。

土井はメディア関連の仕事が長いので既にわかっていることですが、業界以外の方にとっては、いかにメディアというものがいい加減なものかを知る、よいきっかけとなるでしょう。

過去の記事を引用しながら検証するというスタイルのため、赤ペンチェックでどこまでカバーできるか疑問ですが、頑張って要点だけ抜き出してみようと思います。
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■ 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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驚くべきことに日本経済新聞は、バブル崩壊による急速な景気落ち込みが懸念されるこの時期に、心配なのは国内ではなくてアメリカ経済だと述べていた。ここに至っても、日本経済にはまだまだ楽観的だったのだ。

劇薬であるはずの総量規制も支持し、急激な公定歩合の引き上げも賛成だった。さらに税制についても、同社説は次のように論じている。<政府税制調査会もようやく土地税制の見直しに向けて議論を始めようとしている。土地問題に対する税制の役割は補完的というのがこれまでの税調の一貫した流れだった。だが、異常な地価高騰にストップをかけるには税制を主役として活用しなければならない>これで、どうして大蔵省や日銀および政府税制調査会の「過ち」を指摘し、その「過ち」の経緯を偉そうにとくとくと解説できるのだろうか。

土地神話が巨大に膨らむのを煽り、さらにその神話が怪しくなると、先頭に立って「いまこそ税制でバブルを潰せ」と煽るような日本経済新聞の体質が問題なのである。

日本経済新聞社の各紙は、もともと「日本的経営」に対して懐疑的だったが、日本経済が好調な八〇年代になると異様に高い評価を与えるに至り、不況に落ち込んだ九〇年代に評価を下落させ、不況が長引くにつれて、ついには激しい攻撃の対象としてきた。

製造業の日本的経営がさっぱりだめで、奇跡とも言われた日本の金融がものの見事に崩壊に瀕して後退してしまうと、日本経済新聞社の各紙は手のひらを返したように「日本はだめだ」に切り替えてしまった(中略)では、その後にくるのは何だろうか。何のことはない、「アメリカでは……」「世界では……」「欧米では…」の大キャンペーンだったのである。その範囲は、企業経営法に始まり、生産システム管理法、企業年金制度、会計システムなど、多くの分野に及んでいた。

アメリカが日本に強く要求していた算定方式は、アメリカですらも裁判所で判事に「空想」と呼ばれてしまうようなシロモノだったのである。何が「さすがはIT革命の最先進国」なのか! しかも、アメリカ側が日本に適用を要求していた算定方式は、アメリカでも全土の数%にしか適用されていなかったと言われている。日本経済新聞が行ったのは、アメリカ側に一方的に荷担しただけのことなのである。

いまだに、IT革命はそれなりの取材と分析があって紙面を飾ることになったと思い込んでいる人が多い。しかし、実際には九九年になってから、日本経済新聞によって慌ただしく祭り上げられた流行語に過ぎなかった。
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著者はこの本の後半部分で、「そもそも経済ジャーナリズムは現場の取材から得られた情報を重視し、場合によっては『通説』とは異なる結論に達することに存在意義があるのではないのか」と持論を述べています。

非常に筋の通った主張であり、メディアに携わるものとしては、身の引き締まる思いで読ませていただきました。

ただ、個人的には、そもそもメディアは主張すべきなのか? という本質的な疑問もずっと以前から持っています。みなさんはどうお考えですか?

というわけで、本日の一冊は、

『日本経済新聞は信用できるか』

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です。アマゾンで「在庫切れ」になっているのが気になりますが、
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目次

第1章 歴史を書き換えたのは誰か
第2章 日本的経営の称賛から攻撃へ
第3章 グローバル・スタンダード万歳
第4章 アメリカ経済政策の代理店
第5章 社説と編集委員の葛藤と強調
第6章 IT革命キャンペーンの幻想
第7章 世界の工場=中国の熱狂
第8章 日本経済新聞の「正しい」読み方
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