2004年10月26日

『シャープの「ストック型」経営』

http://tinyurl.com/3qoja

本日の一冊は、「流行の経営モデルは追わない」シャープの強さの秘密に迫った一冊です。

本書でも書かれていますが、シャープという会社は、経営念で「規模を追わない」ことを明言している、珍しい会社です。

具体的には、「いたずらに規模のみを追わず、誠意と独自の技術をもって、広く世界の文化と福祉の向上に貢献する」と明記されており、まさに本業に専念すべきであるということを、高らかにうたっているのです。

やはり、環境変化に強い会社というのは、裏にこうした経営者の堅実な考え方があるものなのですね。

では、その考え方が、実際の経営にどう落とし込まれているのか。
そして、著者らが言う「ストック型」経営とは何なのか。

さっそく本書を読みながら研究してみましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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【ストック型】経営モデルの特徴
1.問題解決の先送りをしない
2.個人的な能力に依存せず、システムとしての競争優位を確立
3.規模拡大・シェア拡大を重視しない
4.短期環境変化に対して安定的な企業システム
5.環境の構造変化に適応する企業システム
6.本業重視
7.社員重視の経営風土と学習する組織
8.経営理念の浸透と継承

早川徳次の考え方――「他社が模倣するような商品をつくれ」
・自分だけの商品では発展させるには大変な費用もかかるし、時間もかかる。ところがマネをしてくれる人があると自分のものとあわせて宣伝してくれる

社是:「五つの蓄積」
信用の蓄積、資本の蓄積、奉仕の蓄積、人材の蓄積、取引先の蓄積

ラジオの需要激減の際に会社を救ったのは労働組合の熱意であったが、円高危機の克服も、その例に倣って社員に打開策を求めた(中略)経営危機は社員の創意工夫で乗り切るのが、シャープの処し方

テーマの素晴らしさを意気に感じ、不眠不休に近い状態で実用化を成功させた技術者が経営者のもとに走り、経営者は技術者の功績に手を取り合って喜ぶ。失敗よりも挑戦する気風が尊重される。このような風土がオンリーワン商品を生む原動力になっている

各事業部門が保有する技術を固有に深掘りして専門性を高めるだけでなく、他部門の新商品にも惜しみなく技術を提供する。このような技術マネジメントを”融合”と称して、オンリーワン商品を生む原動力にしている

ブラックボックス化の手法(技術の流出を防ぐ)
1.製造装置を自社でつくる
2.原材料をオープンにしない
3.設計技術を隠す

技術やノウハウをモノづくりの熱意や誠意と一緒にして、働く人の頭脳と心の中に蓄積していくことがもっとも必要(中略)やはり人材に勝るブラックボックスはないのです

シャープの開発力の源泉:「緊急プロジェクト」研究者にとっては、責任を感じる半面、非常にやりがいのあるプロジェクトである。緊プロとして認められれば、部門で細々と研究していたテーマ、自身の学生時代から追いかけていたテーマなどが、公然と陽の目をみるわけである。社内の優れた人材を招聘でき、本社から希望する予算を割り当てられる。普段接する機会の少ないトップから激励されるのも、意気に感じる。緊プロに認定されてから、大概のテーマが開発スピードを上げ、困難な課題も乗り越える例が多い

通常、PPM的な発想であれば、成熟期を過ぎた商品は衰退期を迎えるので、撤退するか、生産コストの低い国へ生産拠点を移そうと考えがちである。しかし、シャープの場合は、オンリーワン技術の開発によって、成熟商品を成長商品へ衣替えさせる戦略をとる

関連商品を統合して生産する工場運営
1.景気変動に合わせた柔軟な生産対応が可能になり、余剰人員が発生しにくい
2.非効率・過剰な設備投資が防げる
3.不採算事業からのシフトが容易になる
4.トータルコストを最小化できる

強い製造業の復活の条件(町田社長)
1.自らの特長を伸ばし、他社にない強みを磨く
2.粘り強く育て上げていく
3.知的財産権の保護とブラックボックス化
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液晶事業への30億円の巨額投資や、太陽電池の例を見る限り、シャープという会社は、優れた投資センスを持っているようです。流行を後から追いかけるのではなく、他社に先駆けて思い切った投資をする。

抜群の投資センスと本業へ臨む実直な姿勢、この辺のバランスの良さがシャープの強さなのかもしれませんね。

というわけで、本日の一冊は、

『シャープの「ストック型」経営』
http://tinyurl.com/3qoja

です。シャープが現在手掛けている各事業の具体的な検証もあり、投資家にとっても役立つ一冊だと思います。

目次
プロローグ 「ストック型」経営とシャープ
第1章 経営理念とリーダーシップの継承
第2章 オンリーワン戦略
第3章 技術戦略と組織マネジメント
第4章 現場の挑戦 オンリーワン商品誕生の舞台裏
第5章 モノづくりを極める
第6章 シャープ「強さの証明」
エピローグ モノづくりを支えるもう一つの「ストック」
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