2004年10月6日

『カラ売りの美学』

http://tinyurl.com/3wb2c

本日の一冊は、「落ちる銘柄」を見極めるための一冊です。「カラ売り」という言葉にまとわりつくダークなイメージから、実体のないテクニカル分析やデイトレードと混同されそうですが、実際には、ファンダメンタル分析を基調とした、極めて正統派の本です。

書かれているのは、まさに「企業業績の鏡」としてのカラ売りであり、企業経営者はもちろん、これまで「買い」一辺倒だった個人投資家も、学んでおいて損はない内容です。

具体的には、企業を凋落に追い込む要因とは何なのか、そしてそれを財務諸表その他の情報からどう読み解くのか、という点が、詳しく書き記されています。

注目するポイントは、会計上の粉飾や、経営陣の倫理観、価値に見合わない株価、キャッシュ、不良資産など、基本的には決まっています。ただ、実際の空売りのケースを学ぶことにより、具体的な基準となる数値や、登場する投資家たちの視点が学べる、というのが本書の最大の特長だと思います。

では、実際にどんな教えが盛り込まれているのか。さっそく内容を見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック ※本文よりサンプルを抜粋
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市場は短期的には非効率な動きをすることはあっても、長いスパンで見れば経営者が無能な企業は必ず色褪せて、どれほど高くなった株価も本来の価値にやがて落ち着く。それがカラ売りで利益を上げるときに基本になる考え方だ。

市場では割高株のほうがよほど見つけやすいのだから、ファンド・マネジャーは割安株を探すよりも、割高株を探し出して(カラ売りによって)利益を出したほうが賢明ということになる。

企業の減益のニュースは増益のニュースよりも株価への影響が大きく、しかもその影響は長く続く(ヘンリー・ラタンらの研究)

証券会社による企業の業績予測は楽観的に過ぎるきらいがある。好材料ばかりを取り上げるので、突然の悪材料が出てくるたびに大きなショックを受けるというお決まりのパターンに陥る。

カラ売りのターゲットになる企業
1.経営者が投資家に嘘をついたり、不透明な事業による売上や利益が大きい企業
2.企業価値と照らし合わせて投機的なバブルがうかがえるほど、途方もなく株価が膨れ上がった企業
3.外部環境に大きく左右されそうな企業

まずい兆候
・会計上の粉飾があって財務諸表が企業の真実を反映していない
・公私混同したインサイダー(経営陣)が企業をプライベート・バンクとみなし、自社株を売りものとして考えている
・流行株もしくは株価がバブル化している企業。たいていは瞬く間に急上昇するのでよく目立つ
・いつもキャッシュをがつがつと欲しがっている企業
・目立つ不良資産があって、バランスシートを醜くしている割高企業

カラ売りをするときには、他人には見えてない大事な事実を握っていることが条件だ。ただし事実をつかんでいるだけでは足りない。企業の価値が決定的に変化すると損益計算書やバランスシートに影響が出てくる。そのときがチャンスだ。

新規公開株投資の鉄則
1.事業内容を吟味すべし
2.失敗の兆候を見逃すな
3.新規かつ唐突な資金注入に惑わされないこと

インチキ会計株の締めくくりとしての結論は、「分析しにくい株ほど儲けさせてくれる」ということである。

特定の業界を根本から揺さぶるほどの変化があったとき、カラ売りには2つの戦略がある。利益の薄い「三流企業」をカラ売りするか、あるいは機関投資家の好む株をカラ売りするかだ。

キャッシュフローが十分ある企業は、主体的な意思決定ができる。だからキャッシュフローは事業に直接的な影響を及ぼす大事なファクターなのだ。

カラ売りを仕掛ける者は、新しい産業に対する市場の期待が思いのほか長続きすることを忘れがちである。

クレイジー・エディー・アンターが教えてくれたこと。それは、腐った企業は決して元に戻らないと言う事実だ。

カラ売り3悪
その1 怠惰
その2 高慢
その3 売り急ぎ

カラ売りの危険な罠
商品相場
テクノロジー株
締め上げ
買収
恐怖
強情
独りよがり
素人

カラ売りで最大のミスは、利益の誇張を見破った程度で鬼の首でも取った気になることだ。たとえ首はなくなっても、ビジネスの心臓部はしっかり動いていることもある(フェシュバッハの言葉)
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300ページを超える本であり、ここに書いていることは、ほんの一部です。本気で学びたい人は、ぜひ買って読んでみてください。その価値は十分にあると思います。

というわけで、本日の一冊は、

『カラ売りの美学』
http://tinyurl.com/3wb2c

です。知られざるカラ売りの哲学を垣間見ることができて、なかなか興味深い一冊です。

目次
第1部 カラ売りの基礎知識

第1章 堕ちる企業に賭ける
第2章 伝説のカラ売り師たち

第2部 実例に学ぶ

第3章 ペテン企業のバブル株
第4章 割高な流行株を狙う
第5章 成長株の転換点を狙え
第6章 わからなければ「売り」
第7章 金喰い虫は死ぬまでキャッシュを貪る
第8章 上昇相場のカラ売りターゲット
第9章 堕ちる業界は丸ごと狙え
第10章 伝説のクレイジー・エディー

第3部 カラ売りの歴史と教訓

第11章 カラ売り投資の泣きどころ
第12章 カラ売りの歴史と論争
第13章 最強のファンダメンタル分析
参考資料:カラ売りの売買方法(米国の例)
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