2004年9月23日

『頭がいい人、悪い人の話し方』

http://tinyurl.com/527wu

本日の一冊は、6月の刊行以来、ずっと売れ続けている新書です。内容は、ざっくばらんに言ってしまえば、「頭が悪い人の話し方」の典型例を全部で40取り上げ、解説したもの。

著者は、大学受験の世界で「小論文の神様」と呼ばれる文章の達人、樋口裕一さん。型通りに書いて高得点をねらう、独自のメソッドが話題になり、私もかつては『ぶっつけ小論文』などでお世話になったものです。

参考:『ぶっつけ小論文』
http://tinyurl.com/4dbrl

しかし、今回は、社会人向けであるうえに、テーマが「話し方」。
どんな内容に仕上がっているのかは、まったく未知数です。

さっそく内容のポイントを見ていきましょう。
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 本日の赤ペンチェック
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1.道徳的説教ばかりをする
まず、物事は道徳では動いていないこと、道徳を説教しても、ほとんどの場合意味がないことを知るべきだ。不道徳な行動をとる人も道徳を知らずに行動しているわけではなく、道徳を知った上で、それを否定しているわけだ。そのような人に道徳を説いても、意味はない。

2.他人の権威を笠に着る
自分でしっかりと考え、それを他者に示してこそ、知性が感じられるものなのだ。優れた本を参考にするのはよい。的確に学者や評論家の意見を示して、それを適用して考えようとするのはよい。だが、他人の判断に寄りかかっている限りは、知性は感じられない。

3.自分を権威づけようとする
権威をいくら増したところで、知性が増すわけではない。それどころか、自分を権威づけようとすればするほど、その人の知性の底が割れて、愚かに見える。それを忘れてはいけない。権威とは、自分で高めるものではない。人が認めてくれてこそ、権威になるのだ。

7.少ない情報で決めつける
世の中にはさまざまな可能性がある。そして、誰もがすぐに思いつくことが最も可能性の高いことだ。だが、そのほかにもいろいろな可能性がある。少ない情報で決めつけるということは、そのほかの可能性を除外することになってしまう。

19.低レベルの解釈をする
そもそも、人間はそのような欲望のみで生きるものではない。もちろん、原初的には欲望が突き動かしている面があるが、それ以上に、理想や理念や人生観のようなものが存在する。それに基づいて、行動する面が多い。それを一律に単純に、しかも欲望のレベルで解釈するということは、その解釈を口に出している人間の思考のレベルを示してしまうのだ。

22.強がりばかり言う
強がりを言わなくても、本当に力があれば、誰もがすぐにそれを認めるものだ。それに、強がりを言わなくても、さっさと自分の実力のなさを認めて精進してこそ、だんだんと実力がついてくるもの。(中略)自分の真の能力を見ないふりをするという「逃げの姿勢」を改める必要がある。そのような甘えが残っている限り、いつまでも逃げ続け、いつまでも能力を発揮できずに終える恐れがある。

26.正論ばかりをふりかざす
人間の弱さを知り、悪い心も知り、自分の中に誘惑に負ける気持ちがあることを認め、その上で清廉潔白であってこそ、知的な生き方だ。それを知らなければ、愚かとしか言いようがない。

30.差別意識を口に出す
差別をするということは、ある種の人の人格を認めないということであって、それは偏狭な精神を意味する。言い換えれば、まさしく教養がなく、多様な価値観を認めることができないということだ。

32.感動癖がある
考える癖をつけることだ。そして、感動するのは、その後のご褒美と考えるとよい。そうして得た感動のほうが、雰囲気で得た感動よりもずっと深くて大きいのだ。

40.バカでよいと居直る
「私はどうせバカ」という言葉に、人間に対する尊敬の念の欠如を感じるのだ。なぜなら、この種の人は、人間は成長できないと決めつけているからだ。そして、「バカ」ということを隠れ蓑にして、甘ったれているからだ。
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こんな風に、ただひたすら「頭が悪い人の話し方」が並べられています。決して科学的ではないですが、それなりにおもしろい読み物ですし、読みやすくまとめられているとも思います。ただ、正直言って、構成が単調すぎます。

また、ひとつ気になったのは、やたらと「この種の人」という表現が多用されている点です。人間をタイプ別に分けて、十把一絡げに論じてしまうのは、それこそ知的な態度とは言えない、と思うのですが、いかがなものでしょうか。

というわけで、本日の一冊は、

『頭がいい人、悪い人の話し方』
http://tinyurl.com/527wu

です。自分の態度を改める指針として、また難しい人々と付き合う際の処世術として、読んでみたらおもしろいと思います。

目次

第1章 あなたの周りのバカ上司――部下から相手にされない話し方
第2章 こんな話し方では、異性が離れていく――だから女性に嫌われる
第3章 絶対に人望が得られない話し方――こんな人とはつき合いたくない
第4章 こんなバカならまだ許せる――この程度なら被害はない 
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