2004年8月7日

『真実が人を動かす』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447832090X/

著者は、アメリカで最も尊敬されるビジネスリーダーの一人、ケン・アイバーソン。2004年7月30日現在、83ドルの株価をつけるアメリカの超優良鉄鋼メーカー、ニューコアの中興の祖です。

序文をあのウォーレン・ベニスが担当していることからも、彼がいかに重要な人物かがわかるでしょう。

本書が出されたのは、1998年のこと。著者のケン・アイバーソンは、当時、倒産寸前のニューコアをアメリカ最大級の鉄鋼メーカーに押し上げた実績で、世界中から注目を集めていました。

本書は、そんな時期に書かれた1冊です。

当時、ニューコアには、いくつかの神話がありました。主だったものだけをピックアップしてみましょう。

■ニューコアの社員7000人は、鉄鋼業界で一番の高給取り。にもかかわらず、生産された鋼材一トン当たりの人件費は最低。

■フォーチュン500社に名を連ねるが、本社勤務の社員はたった22人。CEOから工場労働者までマネジメントの階層はわずか4つ。

■過去25年、2人に1人が失業した構造不況業種にもかかわらず、レイオフなし、工場閉鎖なし。30年以上、すべての営業四半期において黒字決算を続けている。

■固定的な時間給や給与は業界平均の66~75%にすぎず、残りの賃金は業績によって変動するリスク付きボーナス。だが結果的には業界最高水準の給与を支払っており、人材に不足したことがない。

どうでしょう? これだけでもずいぶん個性的な会社なのが伝わってくるのではないでしょうか。

しかもこの会社、アイバーソンが着任してからずっと順調だったわけでは決してありません。80年代前半、アメリカを襲った「鉄鋼冬の時代」には、株価は10ドル以下に下落。この厳しい状況のなか、アイバーソンは、自らの報酬を大幅に削り、レイオフなし、工場閉鎖なしで、見事、乗り切ったのです。

彼は当時、フォーチュン500社のCEOのうち、報酬額が最低だったのですが、そのことをむしろ誇りに思っていたそうです。

本書はそんな個性あふれる会社の、個性あふれる経営者が書いた、「人を動かす」ためのマネジメント指南書です。運悪く買えなかった方のために、本文中からアイバーソンの、マネジャーへのメッセージを抜き出しておきましょう。

「従業員がその生産性に応じて報酬を受ける機会を持てるように会社を経営することは、経営者の義務である」

「経営者だからといって、特別扱いされる必要はないし、そうされる価値があるわけでもない。(中略)経営者の仕事は、自分が管理する社員が立派な仕事を成し遂げるのを助けることだ」

「頼れるのは自分と自分の部下だけ。彼らと協力して成功への道を探るしかない。さもなければ失敗。だから、社員との意思疎通がどんなに大切かを忘れてはならない」

「『良いマネジャーは、どんなビジネスでも良いマネジャーになれる。どこででも成功することができる』こんなご託宣を信じてはいけない。何が良いマネジメントかは状況によって異なる。(中略)業界での経験は大きな強みだ」

「(競争上の強みを生み出す)企業文化を維持していくのはけっして容易ではない。人を『われわれと彼ら』に分断したがる人間の悪しき傾向と戦うべく、つねに注意を払うことが求められるのだ」

「典型的な管理者は、人の話を聞いたり、新しい試みをしたり、分析したりすることよりも、計画を練ったり、指示を出したり、チェックしたりすることに、はるかに多くの時間を割いている。社員を発展の担い手たらしめるには、その時間配分の割合を逆転しなくてはならない」

「(立派なことを成し遂げた人)は、一つやり方がわかったとか、一つやり終えたということで事足れりとしない。彼らはくり返し試みる。そして、しばしば失敗する。しかし、失敗するたびに何か重要なものを得ている。人生においても、ビジネスにおいても、何事かをなそうと思ったら、そうでなければいけない」

ほかにも本書には、アイバーソンが実践した、具体的なマネジメントの手法や、従業員の評価制度・報酬制度など、参考になる多くの情報が紹介されています。

というわけで、本日の一冊は、

『真実が人を動かす』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/447832090X/

です。私は200円で購入しましたが、はっきり言ってお値打ち品です。訳者があとがきで書いているように、「明日からでも自分の仕事の参考にしたい」情報が満載の1冊です。

目次

序文 真実のリーダーシップ
プロローグ 古い考えからの訣別
1章 より高き大義のために
2章 自分が正しいと思うことをやれ
3章 人間はみな平等である
4章 社員こそ前身の原動力
5章 給料のことを話そう
6章 小さいことはいいことだ
7章 リスクを恐れるな
8章 ビジネスにおける倫理
9章 シンプルであることの強さ
エピローグ MBA病につける薬
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