2004年7月22日

『ものづくり道』

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898310761

僕は知らなかったのですが、著者の西堀榮三郎という方は、知る人ぞ知る、伝説の技術者だそうです。登山家・探検家としても知られていたそうで、第一次南極観測越冬隊長としても多大な功績を残しています。東海大学名誉教授の唐津一氏や、世界一の職人として名高い岡野雅行氏がすすめていることからも、この方のすごさがうかがい知れます。

ところがこの本、商売的な見地でいうと、正直きびしい。おそらく版元が「伝説の技術者」を意識しすぎたためでしょう。装丁とタイトルからは、「ものづくり関係者以外お断り」のメッセージが感じられます。担当者にこの話をしたら、ちょっとむっとしていましたが、事実、ものの見事に売れていません。

では、実際の内容はどうかというと、この本は、ものづくりを超えた、普遍的価値を持っていると思います。

もう2年ほど前になりますが、かつて『発想する会社!』の著者、トム・ケリー氏にインタビューをしたことがあります。

『発想する会社!』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/415208426X/

その時、氏がおっしゃっていたのは、「良いアイデアが生まれるかどうかは、良い観察ができるかどうかにかかっている」ということでした。

この『ものづくり道』では、まさにこの「観察」の手法から、アイデアの創出、実践までを、極めて具体的に書いています。統計の罠や仮説を導く際の注意点、実際にプロジェクトを動かす際のマネジメント上の注意点なども参考になります。南極で石油を運ぶ必要性に迫られた時に氷のパイプを作り出した、など、読みごたえあるエピソードも枚挙に暇がありません。

ということで、本日の1冊は、

『ものづくり道』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4898310761

現場で活躍中の技術者だけでなく、MBAホルダーにもおすすめです。

本書の主要目次

序文 ― 唐津一

1.オリジナリティのつくり方
知識がアイデアに変わる瞬間
小さなアイデアの伸ばし方
アイデアを殺さない研究開発
日本人の創造性

2.異質×異質
異質の積を生む方法
動きたくなる組織
本当のチームワーク
リーダーシップ論

3.価値を生む術
科学と技術
技術のあるべき姿
私と技術

4.現場にあるアイデア
事実からの出発
品質管理とは
統計的品質管理の方法
日本的品質管理

5.大自然と経験と
自然に学ぶ
私の自然観
未知の大陸
体験から学ぶ

6.ものづくり道
再び技術を考える
企業のあり方、技術者のあり方
未来へ

初版まえがき ― 西堀榮三郎
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