2011年9月13日

『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』出町譲・著 Vol.2610

【身が引き締まる清貧の思想】
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本日の一冊は、石川島播磨重工業社長、東芝社長、経団連会長、臨調会長、臨時行政改革推進審議会会長を歴任し、日本の戦後復興、
そして行革に全力を尽くした、「メザシの土光さん」こと土光敏夫の言葉をまとめた一冊。

著者は、テレビ朝日「報道ステーション」のニュースデスク、出町譲さんです。

冒頭、著者自身の足で取材した「清貧と改革」の聖地、横浜市鶴見区の土光邸の話から始まり、いかにして土光敏夫が立身出世していったか、そして晩年、行革のシンボルとして尊敬されるに至ったか、その経緯を綴っています。

本書によると、2011年3月11日に起こった東日本大震災の時、被災したIHI(旧石川島播磨重工業)の相馬工場は、当初「一年もしくは半年かかる」と言われていたところ、わずか二カ月で復旧。

その背景には、土光氏が掲げた「人間尊重」の思想があったといいます。

相馬工場では、なんと家が流された従業員全員(パート含む)に、社宅を提供。その結果生まれた団結力で、同工場は、奇跡の復旧を成し遂げたというのです。

本書はこの脈々と引き継がれるDNAの源を明らかにしようとする試みで、偉大な技術者、経営者、そして人格者だった土光敏夫の言葉が計100個、文献を中心に紐解かれています。

<いつも自分を最低の線、つまり社会の底辺に置いておけば、何が起こったって怖くはない>
<一回かぎりの成功は、まだほんものの成功とはいえない>
<自分の火種には、自分で火をつけて燃えあがらせよう>

自己啓発書として読んでも第一級ですが、リーダーシップの本としても、秀逸な内容です。

<現場には、銀座通りもあれば、裏通りもある。幹部は裏通りも歩くべきだ。成績の悪い職場や陽の当たらない職場こそ、見るべきだ>

徹底した現場主義で、次々と改革を成功させていった信念の人、土光敏夫。

本書は、その思想に触れることのできる、貴重な文献です。

経営者をはじめ、人の上に立つ人はぜひ、読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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地力をつけるには、苦労を体験するのが必須条件だ。苦労を知らぬ人間は、端から見れば一にしかみえぬ打撃が一〇にも二〇にも感じられ、そのショックひとつで潰れてしまうことがある
(『土光敏夫大事典』)

いつも自分を最低の線、つまり社会の底辺に置いておけば、何が起こったって怖くはない(『土光敏夫大事典』)

人間は失敗してはいかんと思うと、元気がなくなる。失敗してもいいんだ、すぐそいつを取り返せばいいんだ。しくじってよろしい。しくじったとき、うまくいかなかったとき、投げ出してはいけない。大いにそいつを盛り返してやろう。ボクはそういうふうに考えて、今までやって来た(『土光敏夫 21世紀への遺産』)

一回かぎりの成功は、まだほんものの成功とはいえない。第一の成功が呼び水となって、第二第三の成功を生みだしてこそ、企業の成長、個人の成長がある。それゆえ「成功は成功の母」である
(『経営の行動指針』)

「人の評価は、その時点、時点で見直せ。人は変わるものである」(土光敏夫)

誰にも皆、火種はある。必ずある。他の人から、もらい火するようではなさけない。自分の火種には、自分で火をつけて燃えあがらせよう(『土光敏夫 信念の言葉』)

エジソンもナポレオンも、信長や家康も、どんなに偉かった人でも今日の日の出をみることはできない。僕らはそれを享受できる幸せに恵まれているのだ(『土光敏夫大事典』)

「個人は質素に、社会は豊かに」(土光の母、登美の教え)

人は、すぐあれはこの点が駄目だと欠点をいうじゃないですか。神様はそんなことしませんね。誰だって長所があるもんだ。長所をみないで人事をやるなんておかしいですよ

沈まない船はない。つぶれない企業はない。すべては人間次第だ。一般社員は、これまでより三倍働け、重役は一〇倍働く、僕はそれ以上に働く(東芝社長に就任した時の言葉)

現場には、銀座通りもあれば、裏通りもある。幹部は裏通りも歩くべきだ。成績の悪い職場や陽の当たらない職場こそ、見るべきだ(『土光敏夫 21世紀への遺産』)

研究開発費は、不景気で経費節減だからといって惜しんではならない。会社の将来に必要な研究であれば、銀行から借金しても捻出すべきだ。不景気だからといって、研究をストップしたら優秀な研究者の頭が錆びてしまう(『土光敏夫 21世紀への遺産』)

「信念を貫きとおそうとする者の行方には重い十字架が待っている」(土光が尊敬した石坂泰三の言葉)

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『清貧と復興 土光敏夫100の言葉』出町譲・著 文藝春秋
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◆目次◆

序 章 「清貧と改革」の“聖地”取り壊し
第1章 底辺からの出発
第2章 復興と企業再生への執念
第3章 原発と日本の技術力
第4章 田中角栄との「決闘」
第5章 清貧と臨調
第6章 わが師、石坂泰三の教え
第7章 城山三郎と語る
終 章 「土光敏夫」のDNA

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