2008年6月9日

『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司・著

【涙なくして読めない経営書】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860632486

本日の一冊は、法政大学大学院で教鞭をとる著者が、過去6千社を取材したなかから、自らが考える「日本でいちばん大切にしたい会社」を選び、その経営哲学と行動を紹介した一冊。

著者いわく、「日本でいちばん大切にしたい会社」とは、「弱者の側に立った、人間の尊厳を高め、守ることに役立つ製品をつくっている会社」であり、本書では大きくクローズアップされた5社に加え、コラムとして9社を紹介。

紹介されているのは、50年以上前から障害者の雇用に積極的に取り組み、感動経営を実現している「日本理化学工業」、斜陽産業である寒天を扱いながらも48年間増収増益を続ける伊那食品工業、顧客満足に徹底にこだわることで、全国から注文があるという杉山フルーツなど。

一番軽度の障害者を採るのではなく、他では採ってもらえない子に就業の機会を与えるポリシー、社員の安全のために倒産ギリギリの状態で行った設備投資、JAや経済連のロジックではなく、あくまでお客様に美味しいものを提供しようとする販売戦略…。

通常の経営者であれば、到底実現できない行動の数々に胸を打たれる、ビジネス書を超えた感動作品です。

極めて主観的であり、かつ地味な本ではありますが、経営においてもっとも大切な何かを思い出させてくれる内容です。

ビジネスの本来の意義を見直すために、また働くことの素晴らしさに目覚めるために、ぜひ読んで欲しい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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最近、多くの人が勘違いしているのですが、会社は経営者や株主の
ものではありません。その大小にかかわらず、従業員やその家族、
顧客や地域社会など、その企業に直接かかわるすべての人々のもの
なのです

地域社会の方々から、「あの会社は私たちのシンボルだ」「この会
社はわが町の自慢だ」「この会社にこそ、息子や娘を入社させたい」
と思われるような会社になること

本当にいい会社とは、継続する会社です。「業績が高い」といって
も、業績が上がったときに社員を雇い、業績が下がったときに社員
の首を切るようなことを繰り返している会社は、長続きしないものです

重要なことは、その会社が、私たちの心を打つようなことをやって
いるかいないか、なのです。心に響く会社なのか、社員がやりがい
をもって楽しく仕事に取り組める会社なのかということです

「幸福とは、1.人に愛されること、2.人にほめられること、3.
人の役に立つこと、4.人に必要とされることです。そのうちの2.
人にほめられること、3.人の役に立つこと、そして4.人に必要
とされることは、施設では得られないでしょう。この三つの幸福は、
働くことによって得られるのです」(禅寺のお坊さんの言葉)

人を工程に合わせるのではなく、工程を人に合わせる

努力したくても、がんばりたくても、がんばれない人々が真の弱者
で、がんばれるのに、がんばらない人々は偽物の弱者だ

「四八年間、社員を雇い社員の給料とボーナスを上げ続けてきたこ
とを誇りにしたい」(伊那食品工業株式会社 塚越寛会長)

結局、塚越さんは、当時にすれば、それこそ会社がつぶれるのでは
ないかと思われるような金額を投入して、従業員の安全のための設
備投資をするのです。原因は、間違いなく従業員のミスでした。に
もかかわらず、社長は「二度と危ない仕事はさせない」と考え、ヘ
タをすると会社がつぶれるような投資をして設備を導入しました。
その社長の決断は、全従業員の胸を打ったのでしょう

異常な成長で一気に大きな年輪を刻む木は、その後の風雪に耐える
ことなどできないのです。それをビジネスになぞらえたのが、「年
輪経営」なのです

装具の一つひとつに、「静岡県の○○様」「愛知県の××様」など
と書いてあります。名前の書かれた方々の顔を思い浮かべながら、
みんな仕事をしているのです

みな様方は、JAや経済連などが『三分の一以上、赤みがさした場
合には受け取らない』と言っているから、三分の一で出しているの
でしょう。お客様は満足しないけれども、そうしないと売れないか
ら、そうやっているんですよね……? それではダメです。お客様
のためを考えるなら、みなさん、ご自分で売るべきです。もしそれ
ができないようであれば、当店に赤く熟したいちごをもってきてく
ださい。当店で、今日とったものを今日売りましょう

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『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本光司・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4860632486
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◆目次◆

第1部 会社は誰のために?
第2部 日本でいちばん大切にしたい会社たち
1.障害者の方々がほめられ、役立ち、必要とされる場をつくりたい
  日本理化学工業株式会社
2.「社員の幸せのための経営」「戦わない経営」を貫き、四八年
  間増収増益 伊那食品工業株式会社
3.「人を支える」会社には、日本中から社員が集まり、世界中か
  らお客様が訪ねてくる 中村ブレイス株式会社
4.地域に生き、人と人、心と心を結ぶ経営を貫いていく
  株式会社柳月
5.「あなたのお客でほんとうによかった」と言われる、光り輝く
  果物店 杉山フルーツ
おわりに

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